目黒にある寄生虫博物館へ行ったことがある。妻が海外赴任するにあたって、誰かが妻に目黒の寄生虫博物館を見ておいた方が良いと言ったという。小さな博物館だった。中にはものすごい数の寄生虫の標本が展示されていた。
もうすっかり目黒寄生虫博物館のことなど忘れていた。ネットでビル・ゲイツが「世界中におすすめする日本の博物館がここ、ぜひ足を運んでみてください」とブログに投稿したという記事を見つけた。マイクロソフトを創業したビル・ゲイツがすすめる日本の博物館!きっと上野の国立科学博物館だろうなと、記事を読み進んだ。目黒寄生虫博物館。えッあの小さな目黒の博物館。ビル・ゲイツが。どうして?なんで。と疑問がわいた。こういう風に、次から次へと関心がわき、知りたい、教えてと思える展開は、久しぶりのこと。
「グロくて空腹時に見るのがおすすめ」と注意喚起するほど。決して見て楽しかったり、感激する展示物ではない。でも、なぜあのビル・ゲイツが世界の人々にこんな小さな気持ちの悪い博物館へ足を運べと推奨しているのか。ビル・ゲイツは、現在慈善活動に力を入れている。特に感染症対策に多額の私財を投じている。
国立感染症研究所のホームページには、寄生虫症:通常は蠕虫(ぜんちゅう)、原虫(顕微鏡でしか見えない単細胞生物)による疾患ですが、昆虫・ダニによる疾患も含みます。主に以下のような疾患が含まれます。アニサキス症、アメーバ赤痢、エキノコックス症、疥癬、クリプトスポリジウム症、ジアルジア症、蠕虫症、シラミ症、旋尾線虫症、トキソプラズマ症、肺吸虫症、マラリア、アライグマ回虫による幼虫移行症)と書いてある。
アニサキス症といえば、妻が七転八倒して腹痛を訴えたことがあった。長い海外生活を終えて、日本に帰国して刺身をたくさん食べるようになっていた。病院でアニサキス症と診断された。私と同じものを食べて、なぜ私だけ何ともなかったのか不思議だった。
発展途上国で暮らすと、寄生虫問題は、大きな危険となる。ネパールでの3年間、寄生虫検査は、小学校以来のプラスとなってショックを受けた。アフリカのセネガルでは、ニワトリの卵の中に回虫がいて、卵が食べられなくなった。聞いた話で、セネガルでは、サナダムシも珍しくない寄生虫だという。
東京医科歯科大学の故藤田紘一郎教授は、寄生と共生と言って、寄生虫は、人間にとって悪いことばかりでないと本に書いていた。でもやはり気持ちが悪い。藤田教授のように人が嫌がる研究をしてくれる学者がいるからこそ、多くの人の役に立つのも事実である。
日本には、ビル・ゲイツのような資産家は、なかなか出てこない。国会議員にいたっては、脱税行為である裏金作りにうつつを抜かす。国会議員の何人が世田谷の寄生虫博物館を訪れたことがあるだろうか。国会議員は、チュウチュウ金集めしていても、真面目な国民は、確定申告して、愛妻・納税・墓参りの生活をする。チュウチュウする議員を選挙で選んでしまう真面目に納税する国民とチュウチュウしている議員とどちらが寄生虫にも劣る存在なのか、答えは明確だ。それでも国税庁は、犯罪として捜査しない。そのうちに世田谷の寄生虫博物館には、「ウラガネーゼ・チュウ」という新種の寄生虫が展示されるかもしれない。