団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

そうめん

2022年08月15日 | Weblog

  『夏休み 昼夜そうめん もうええねん(神奈川 小5)』進研ゼミ小学講座“小学生夏休み川柳2022”優秀作品。

 

 小学5年生の正直な気持ちが伝わる。猛暑日が続き、この小学生の家庭では、昼も夜もそうめん。食べ盛りの小学生が、食傷気味になっている様子が伝わる。私もそうめんが嫌だった。昼夜そうめんということはなかった。そうめんと知ると、食欲が失せた。魚や肉を食べたかった。それは夏だろうと冬だろうと変わらなかった。あたかも成長期には、タンパク質や脂質が必要だと、体が要求しているようでもあった。終戦後に生まれ、食糧事情が悪い中で育った。保育園ではアメリカからの脱脂粉乳を飲んだ。小学生になっても、しばらく学校給食で脱脂粉乳が出ていた。それもいつしか市内にある“上小牛乳”とやらの瓶入りの牛乳に変わった。

 

 そうめんといえば、思い出すことがある。妻の仕事の関係で、海外に長く暮らした。アフリカのセネガルでのことだった。警視庁から出向してきたYさん一家と知り合った。セネガル赴任が決まった時、暑い所なので2年分のそうめんを購入した。引っ越し荷物と一緒に船で任地に送った。その大量のそうめん、なんと半年で食べきったそうだ。暑いと食欲がなくなる。でも何故かそうめんは、するすると胃に入る。赤道が通るセネガル、確かに暑かった。2年分のそうめんを半年で食べきったことは、セネガルの暑さがどれほどYさん一家の食欲を奪っていたかわかる。もしかしたらYさんの息子さんたちも「…そうめん もうええねん」の心境だったかもしれない。

 

 住む町で「そうめん」ののぼりを見つけた。これは珍しい。夏になるとあちこちの食堂の店の前に「冷やしラーメン始めました」ののぼりが立てられている。「…始めました」は、おそらく一時歌謡曲で「冷やしラーメン始めました」が流行ったからであろう。「そうめん」ののぼりを出す店は、見たことがない。「そうめん始めました」では、歌にもならないだろう。そうめんは、地味な存在なのかな。

 

 私も後期高齢者のコキゴロウ(古稀+5歳)である。ずいぶん遠回りしたが、やっとそうめんを欲する年齢になったようだ。猛暑日が続くと食欲がなくなる。妻が出勤していない昼めしは、なおさらである。かと言ってそうめんののぼりがある店へ食べに行こうとは思わない。外食は、コロナのせいでまだ控えている。自分で作るしかない。そうめんを茹でて水にあてる。ツユは、冷蔵庫にある市販のモノ。ミョウガを刻む。器にツユ、氷、ミョウガ。そうめんをツユにくぐらせて口に運ぶ。のど越しが何とも言えない。『夏休み 昼夜そうめん もうええねん』の神奈川の小5の生徒も、そうめんのこの良さが、身に染みてわかる日が来るだろう。

 


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