団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

ハーブ ローズメリー

2020年11月11日 | Weblog

  ハーブや香辛料に興味がある。特にローズメリーが好き。子供の頃は、ローズメリーの存在さえ知らなかった。カナダ留学中もローズメリーは、女性の名前だと思っていた。音の響きもいい。ハーブとして、実際に口にしたのは、北アフリカのチュニジアだった。

  チュニジアはイスラム教国なので、人々は豚肉を食べない。羊の肉が多く食べられている。住んでいた首都チュニスから少し離れた村に羊の焼肉で有名な店があった。その店の周りは、ローズメリーが群生している。羊はローズメリーがたいそう好きだそうな。たくさんローズメリーを食べた羊は、すでに身がローズメリーで味付けされているようなものだ。店先で解体された羊を炭火で焼く。味付けは岩塩だけ。美味かった。ローズメリーを好きになった。

  帰国して現在住む集合住宅に入居した。温暖な地なので、ベランダで花やハーブが良く育った。ローズメリーも植えた。ある日猿の群れが、雨宿りのためベランダで1晩過ごした。ベランダの桟には、たくさんの花やハーブが鉢植えされていた。被害はなかった。ただあの数での襲来だったので、マーキングされた柱や床の悪臭がひどかった。落とし物を片付け、床をブラシで洗った。そして花やハーブが喰われていないか調べた。ローズメリーを植えた鉢が無くなっていた。下の駐車場に落とされたのかと、調べたがそうではなかった。「猿が鉢ごと持ち去ったのか!まさか山の中でローズメリーを植えて増やそうとする魂胆ではなかろうか」 ローズメリーのハーブとしての効能に、頭が良くなるがあると聞いたことがある。私にはもう遅いが、猿は本能的にそのことを知っていたのかもしれない。もしそうだとしたら、野生動物もすみに置けない。

  ハーブや香辛料は、おのおのの地域の住民の長い食文化史の結晶だと思う。妻の任地で、いろいろなハーブや香辛料を知ることができた。各地の市場は、まるでハーブと香辛料の博物館だった。ネパールではカレーに使う多くの香辛料、アフリカのセネガルのバオバブの実、真っ赤ビサップ茶、旧ユーゴスラビアのパプリカ、チュニジアのミント茶やローズメリーでマリネした羊の焼肉などなど。

  日本にも昔からたくさんのハーブや香辛料がある。私は、山椒が好きだ。鰻料理にふりかけると最高。ビリピリ感が堪らない。大葉もいい。七味唐辛子は、日本の香辛料の玉手箱さ。調味料として使う醤油や味噌の存在も嬉しい。それを海外からの観光客が喜んでくれるのも嬉しい。60年前、軽井沢の宣教師の子供達に散々馬鹿にされたが、外国人でも最近の観光客は、敬意を持って日本文化に接してくれることが喜ばしい。

  散歩の途中、ある家の前の花壇にたくさんの小さな紫色の花がこぼれるように咲いていた。近づいて見るとローズメリーだった。チュニジアのローズメリーの野原を思い出す。一斉に開花して、紫の絨毯のようだった。

  日本の町には、たくさんの花壇がある。空き地もある。私に提案がある。ハーブの多くは、綺麗な花を咲かせる。ハーブの花壇があってもいい。そして看板。「どうぞ自由にお持ち帰りください」 私の勝手な夢である。


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