団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

小池都知事・リオ着物・たすき

2016年08月24日 | Weblog

 8月21日リオデジャネイロオリンピックが閉幕した。雨の中、閉会式でリオデジャネイロ市のパエス市長から五輪旗がバッハIOC会長に戻され、会長から次期開催地の小池東京都知事に渡された。

 朝ラジオを聴いていた。“高嶋ひでたけの朝ラジ”の中に「本日発売やじうま情報」がある。そこでファッション評論家の石原裕子さんが「旗を受け取る直前にたすきをくわえて、袖をたくし上るパフォーマンスをすれば・・・様式美と武士道といった日本の良さを、世界にアピールできたはず」と小池都知事の着物姿に98点という高評価を与えたと伝えた。

  このニュースを聴いて思い出した人がいる。ある国で会った日本大使夫人である。夫人は着物を着ていることが多かった。大使館の館員の中に私たち夫婦のように女性が館員で夫が配偶者として赴任しているケースはなかった。大使館に婦人会がある。婦人会は館員配偶者だけが入会できる。男の私を入れるか入れないか会員の意見が割れたそうだ。しかし大使夫人の「配偶者に男も女もないでしょう」の一言で私の入会が承認された。

  婦人会は大使公邸で海外青年協力隊の隊員の激励会などが開かれるとかりだされ手伝いをする。私も何回か大使公邸の調理室で大使夫人を手伝った。その時の大使夫人の出で立ちが忘れられないのである。着物にたすき掛け。姿だけでなくその料理の手際よさに見惚れた。大使公邸には専任の調理人がいる。調理人の職域をおかさず、分業でサポートする。そんな心遣いに敬服した。婦人会の会員への指示も的確だった。

   100人近い海外青年協力隊の隊員が招かれていた。隊員の代表が体験報告を発表するたびに大使夫人は涙をハンカチで拭っていた。近くにいた私たちに「この人達の苦労を今日は私たちが少しでも忘れさせてあげましょう」言って、帯を「パンッ」と叩いた。もちろんその時は着物のたすきは消えていた。会場での大使夫人の正装の着物姿も素晴らしかったが、私には調理場での大使夫人の着物にたすきの姿の方がさらに美しく見えた。

  私は女性の着物姿を美しいと思う。4歳で死別した産みの母親の私の手元にあるたった1枚残された写真が着物を着ているものだ。それが原因かもしれない。

   海外での生活を切り上げ帰国した後、妻が着物の着付け教室に通ったことがある。海外での生活で着物の美しさに目覚めたらしい。妻はかの大使夫人の着物の着こなしを褒めていた。家でも何回も着付けの練習をしていた。教室には1年間通った。手際よく短時間で着物を着られるようになった。傍で見ている私は女性の着物の着付けは実に難しいものだと知った。妻の着物姿は私の心をくすぐる。難しい着物を一人で着られる妻を凄いと思う。簡単に着付けられないからこそ、着物は美しいに違いない。

   ラジオを聴いた後、テレビで小池都知事が雨の中、五輪旗をバッハ会長か受け取る姿を観た。石原裕子さんが言った「たすきをくわえて、袖をたくし上げる」小池都知事の姿を想像した。プロは良いことを考える。周りにどんなに良い考えを持っている人がいてくれても聞く耳を持たない人が多い。小池都知事に、この石原裕子さんが言ったことを知ってほしい。そしてこれから周りの声に耳を傾けて、暗雲立ち込める旧態依然の都政に新風を吹き込みながら突き進んでほしい。

 一緒にテレビを観ていた妻が言った。「あの雨に濡れた着物もうダメだね」  同じものを観ていても、考えていることが違う。だから夫婦は面白い。


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