“いつのまにか”が好きである。電車の中で本を読んでいて、気がついたら降りる駅に着いていた、こんなのが最高である。居眠りしていて、目が覚めて口の周りにわずかによだれがたれ、降りる駅とわかって、あわててよだれを手でぬぐいつつ、飛び降りる。そのような、いつのまにかではない。集中して何かを一生懸命にやっていて、気がついたら、もうこんなに時間が経っていた。そういう“いつのまにか”が好きだ。
いつのまにか、と言っても1年5年10年では困る。一日の中で「えッ」と思う程度の最大でも数時間の長さがいい。友人を招いて食事をともにし、飲んだり話したり食べたりして、気がついたら時間が思わぬほど過ぎていた。そんな時間が好きだ。期待以上の内容で気持が引きこまれる本を読んでいたり、没頭して何か書いていたり、夢中で話し込んでいたりする時間である。テレビを観ていても、寝ていても、ぼーっとしていても、それは簡単には実感できない。
私は今年、“いつのまにか”をたくさん経験したいと願っている。