備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

空焚き

2006-12-27 21:41:59 | 窯作り・窖窯について

寒波襲来の感があるので、急遽、窯の空焚きをすることにした。目地のモルタルを焼き固めてしまう。これで、目地に霜柱が立たない。

理想を言えば、もう少し乾かしてからの方が良いのだが、悠長に構えてもいられない。今年の夏に知人から戴いた材木を使う。中国の松で、かなり大きな木であった事が窺えるものもある。あまりに立派なモノは後日のDIY用に残しておく。

最初は正面の下焚口で焚火を始め、温度が上がったら、中へ投入。仕上げは横焚口から順次放り込む。火を入れて ざっと12時間焚き続ける。

目安は、窯からの水蒸気の出具合。それと、低温時に窯壁に付着したススを燃やし切るという事。きちんとススを燃やしておかないと、あとで後悔する。窯詰めの時に顔が真っ黒になるのでね……。初窯以降の本焼きではススが残らないので、初窯前だけの段取り。

夕方から始めて、終わったのが午前の3時半。雨もあがり、晴れている。心地よい疲労感と少しの達成感を感じながら 暗闇のしじまに星を見上げた。オリオン座がすっかり西に傾いていた。


窯の中で 野焼き?

2006-12-16 09:29:50 | 窯作り・窖窯について

ちょっと お遊び。
窯を少しでも乾かしたいという思いで、窯の中で焚き火をした。炎が天井に触れない程度の火ではあるけれど、それなりに気温が上昇する。邪魔になっていた竹カゴの竹を燃やす。竹は火持ちは悪いものの火力が強い。あれほどあった竹も燃やせば数時間で無くなった。

ウロウロしている時に 夏に窯床を作った際に採っておいた粘土を発見。そこで、バケツの中で砕いて、水を入れて練ってみる。可塑性がある、指先で石を取り除き、小さな碗形にする。少々、砂っぽいが、それなりに雰囲気のある土。

火から30cm離して向きを変えながら強制的に乾燥。この時点で、窯を乾燥させるという目的は、2次的なものに降格。やる気満々で事に当たる。全体が白く乾いたら、徐々に火に近づけていく。この時点で1時間経過。昼食後、いよいよ本気モード。まずは、火の際へ。そして、熾きの上。ヒビが無いか観察しながら……。あとは、上から竹をかぶせたり、空気を入れたりする事1時間。全体が真っ赤になったところで、引き出してモミ殻の上へ。炭素を吸着させる。もうひとつは熾き(おき)に埋めてしまう。で、火がなくなるまで放置。

結果は、奥の『黒』が炭化させたもの、手前の『赤』が熾きに埋めておいたもの。
荒っぽい作りをしたけれど、傷も無く 無事に成功(?)。めでたしめでたし。

子供たちも自分で焼いた。
大喜び! もちろん、『焼きイモ』の方ですケド。


壁土を塗る

2006-12-10 19:24:38 | 窯作り・窖窯について

壁土を塗る。
一気にやってしまいたかったので、お手伝いをお願いして、総勢6名で壁塗り。

建材屋さんに断熱モルタルを持ち込んで、壁土を作ってもらった。山土と断熱モルタルが半々ほどの割合。おそらく建材屋さんも考えたのだろう。ワラの量、山土がこれまで経験した壁土と違う。未経験の配合なので どのようになるか予想がついていないが、とりあえず塗る。
先輩方のアドバイスを頂きつつ、希望的な勘が全て。

レンガがガタガタしていても 壁土を乗せると新しいカーブが出来ていく。見えていない曲面を、瞬間瞬間で作っていく作業。厚みが不均一になっているだろうが、気にしない。信頼できるメンバーがあってこその仕事。

後日、乾き具合を見ながら叩き締めていく。
もう一息だな。


カゴ撤収

2006-12-09 09:04:33 | 窯作り・窖窯について

内型にしていたカゴをはずしていく。
いままで見る事が無かった向きからの風景。

はずしていくに従って、モルタルがはみ出ていたり、足りなかったり……。それらの微調整を内側からチョットづつしていって、しかるべき時が来たら、空焚きをする。
耐火モルタルは、ヒートセットといって、火を入れないと固まらない。

後は窯の周辺の使い勝手を良くする為に、環境整備をしないといけない。階段を作ったり、埋め戻したり…。このとき使うモルタル(ポルトランドセメント)はエアセット。空気に触れると固まるモルタル。
似たような名前でも使う場面に応じて変わる。

今回 使ったのは、耐火モルタル、断熱モルタル、アルミナセメント(キャスタブル)、ポルトランドセメント。


煙突

2006-12-05 09:27:18 | 窯作り・窖窯について

とりあえず 煙突のレンガ積みを終了。ここのところの寒さで目地が凍りそうなので……。後は実際に火を入れてみて 雰囲気を試すとしよう。煙突は高いほど 引き(空気の入るスピード)が良くなる。もっと高く出来るが、まぁ、この辺でよかろう……。街中であれば、家々の屋根よりも高くしないと煙害がひどいが、コチラは山の中。せいぜい自分トコだけ。火事にならなければOK。

レンガが余っていたので、大きく作ろうとして、ついつい太く作りすぎた感がある。高くすればバランスが取れるのだけれども、チョット短い。ずんぐりとした感じで、煙突と言うよりも小さな窯が引っ付いた感じになっている。この太さについて訊かれたら 備前風ではなく異国風の作りだと言い張ろう。「太ったサンタクロースでも入れるのさ」って。

以前、読んだ本の中に 登窯(京都)の容積に対する煙突の太さと長さに関する方程式が書いてあって、コピーをとっていたのだが何処にやったのか手元に無い。本の題名も失念。残念。

総じて備前焼の窯の煙突は細くて長いと思う。他の窯業地の煙突は、太くて短かったり、複数あったりする。伊部が山陽道の街道筋で家が多かったからかも知れないし、レンガが豊富に手に入る産地だったからかも知れないし、築炉屋さんのセンスなのかも知れない。

最近、備前で新築される窯では丸い煙突が流行っている。レンガで丸く作る場合もあるし、カーボランダムの筒を積み重ねて結束している場合もある。可愛らしい。

まぁ、煙突と言えばヤキモノ屋のシンボル。もうチョット高くして、目立つようにしたいなぁ。


本体終了

2006-11-25 21:17:15 | 窯作り・窖窯について

窖窯(あながま)本体部分の最終部分。
本体から煙突へは水平煙道でつなげる。

この水平煙道の天井は平らに作る。
小生の場合、窯焚きの初期段階で『引き(窯の中に入る空気のスピード)』の調整を煙道でする為に、水平に作る。普通は 引き具合はダンパーーまたはエアダンパーで行う。
小生がする煙道での調整は、エアダンパーの調整に近い。引き以外の理由もあるのだけれど……。

本体アーチの納まりをつける為に 最終部分を丸く作るパターンが多いのも確か。
その辺りも窖窯(あながま)に対する考え方の違い。

小さい事のようで、結構大きいことのように思うのは小生の思い込みなのかも知れないが……。

追記:『エアダンパー』について ご教授いただきました。
空気を入れて、窯の引きを調整する装置はドラフト(draft )。
ダンパーは遮蔽板を使っての引きを調整する装置のことなので、エアーダンパーという言い方は、焼物屋的表現となります。
ご教示有難う御座いました。


ボロのホウキで何を……

2006-11-22 23:29:56 | 窯作り・窖窯について
窯焚きの最高温度は1250度ぐらい。
ただし、これは温度を測っている部分であって、実際は瞬間的にはもうチョット高い温度の部分もあるだろう。

1200度もの温度を測る為には熱電対という道具を使う。
保護管に入っているので外見は単なる白いセラミックの棒。

この熱電対の先端を窯の中に差し込んで測る。大体は 横焚き口から差し込むことが多い。
小生の場合は、窯の天井から。理由は、窯詰めに左右されにくい場所という事と横焚き時に 最後に温度が上がる場所という事。
あとは慣れの問題。

熱電対を入れる為には 窯に穴が必要。
その穴を加工する為に、棒状のものを立ててキャスターを流す。
後でキャスターが固まってから抜くと差込口が完成するという訳。

それが たとえボロボロのホウキの柄であっても問題ではない。
否、むしろホウキの柄がうってつけの太さ。

やきもん屋は 何でも使うサガなのか?
とかく捨てるものが少ない。というか、物持ちが良いなぁ。


ドーム出現

2006-11-22 00:17:10 | 窯作り・窖窯について
窯のドーム部分が完成した。
まるい形を四角いレンガで作るために 無理やり曲げていくという感があるが とりあえずドームになっている。

このドームが火袋(ひぶくろ)または、初戸(ウド ※注1)と言われる部分。
正面焚き口からの炎を どのようににして後ろへと送り込むかという役割を担っている。

あちらこちらで学んだスタイルのうち ふくらみのあるスタイルを採用。
備前市郊外の窖窯作家の方々の多くがこのスタイルをとっている。
理由は 酸化焼成に対してのコントロールの問題。

窯焚き技術が進んだので、ある程度のコントロールは可能だけれど、やはり、窯の形そのものは重要項目には違いない。

だからこそ、窖窯はオーナーの数だけ 窯のスタイルがあるという訳。

その他、独特なアレンジしていて 内心、耐久性の心配もしているのですが……


※注1 【 初戸(ウド) 】
備前独特の言い方で 本来は、連房式登窯の一番前の部屋のことを指す。
窖窯では 部屋の仕切りが無いので 窯そのものが一部屋であるが、
燃焼室と焼成室が同じ場所という意味合いから、
この火袋と最前列のあたりを 通称でウドということがある。運道(うど)とも

頂上決戦

2006-11-16 22:52:44 | 窯作り・窖窯について

遂にアーチがつながる。
連続する立体的な曲面のために いち早くつながる部分とそうでない部分が出来る。つまり窯幅の狭い部分が真っ先につながり、紡錘形に空きが出来る。

アーチを立ち上げていって、最終的に空いた部分にはキャスターを流し込む。キャスターとは、粉を水で溶いて固まると耐火物になる便利なもの。レンガで作るにはややこしいところはキャスターに限る。ただ、摩擦に弱いので、使う部分はある程度限った方が良い。

もし、キャスターが無ければ レンガを切り刻んで作っていかなければならない。
今の世の中で良かった。


ただ買うとなると高価なので大変ではあるが……。


横焚き口

2006-11-03 23:12:40 | 窯作り・窖窯について

横焚き口を作る。

レンガで作る都合上、ユニット単位はレンガ1丁。
その都合で 横焚き口のサイズはレンガ2丁分。

おおむね備前では このサイズが多いが、窯のサイズと焚き口の場所によって バランスが決まってくる。

肝心な事はピッタシ2丁分で作らない事。

窯焚き中、レンガは熱によって膨張する。その膨張する方向によっては レンガを噛む事となってレンガをはずせなくなる。意外と多く有り得る事。その為に2丁分よりも 若干大きめに作る、

ただし、ポイントがひとつ。


レンガで蓋をする訳だが、そのレンガがキチンと留まるという事。
その為には、レンガ2丁よりも小さい部分を作ること。
または、水平にしてレンガが落ちないように作ること。
モルタルの目地の厚みがないので、割と意識せずに出来るが 要注意。

たいした事でないように思えて、結構 重要な事柄。