そのレコードは、D. バレンボイム / P. ズーカーマン / J. デュ・プレという豪華なメンバーによる演奏を収録したものであった。
チャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調 「偉大な芸術家の思い出に」は、通して聴くと50分ほどの大作である。
このピアノ三重奏曲は、法律家を辞めて音楽家になったあと、生活が苦しかったチャイコフスキーをいろいろな面で援助してくれた、親友のニコライ・グリゴーリェヴィチ・ルビンシテインが亡くなり、その一周忌のために作曲された。
ピアニストだった旧友を偲んで作曲されたので、ピアノの超絶技巧が繰り広げられ、死者を悼む沈鬱さの中にも華麗なピアノの響きが存分に活かされた名曲である。
その曲に耳を傾けながら、しばしの時間「無言歌」の店内で過ごした。今年は知り合いの方で亡くなる方が多い。
つい先日も、私よりもちょうど一回り上の年齢の先輩税理士の方が亡くなった。若手の頃色々相談に乗ってもらった方であった。
時の経過は容赦がない。大きな川の流れの様に様々なものや人々を押し流していく。
亡くなった友人を偲ぶ名曲を聴きながら、私も一足先に遠くへ旅立った人のことを思った。