小説家・高橋克彦さんの「東北・蝦夷(えみし)の魂」を読み始める。岩手県出身の高橋さんは、ずっと東北出身であることをコンプレックスに感じていたが、ある日京都の山奥を旅行中、あるお婆さんから地元の歴史を延々と聞かされ、自分の生まれ育った土地にそれだけの知識を持っていることに愕然としたという。その後、東北を舞台とした作品を書き直木賞を獲るのだが、歴史を調べていくうちに、東北人の持つコンプレックスの原因に思い当たる。
日本書紀などに書かれた歴史というのは、常に勝ち組が残した記録であり、負けた側の歴史は抹消され続けてきた。勝った側は、なぜ彼らをやっつけなければならなかったか、正当性を主張する。東北の人たちは、そういった勝ち組の歴史を勉強させられ続け、いつしか自分自身にコンプレックスを持つようになった。
もともと日本には大国主一族が住んでいたが、そこに朝鮮半島から渡って来たのがアマテラス一族だ。アマテラス一族は出雲にいた大国主一族をやっつけると大和朝廷を開いた。原日本人とも言える大国主一族は出雲を追われると、北へ逃げる一派と南に逃げる一派に分かれた。それが蝦夷(えみし)と隼人(はやと)だという。
東北は大和朝廷成立後、大きく5回の侵略戦争を経験し、すべてに敗れた。その結果、東北の歴史は日本の歴史から消されてしまったのである。
というような話を読んでいると、東京で使う電力のために、福島に原発が作られ、東京オリンピックのために土建業が吸い取られ、復興が遅れるというような現代が重なる。
中央政府はいつだっておいしい話ばかりする。21世紀の今だって、勝ち組の歴史を書き続ける。
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