九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

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随筆 俺の自転車 二   文科系

2021年08月09日 10時24分26秒 | 文芸作品
 
 自転車という乗り物が、あるいはサイクルツーリングというスポーツが、人の体力や体形を作ったり、維持したりするのにどれだけ優れた乗り物であるか。七七歳のいま過去を振り返って、つくづくとそう思う。その理屈を述べると、こういうことになろうか。

・人の活動年齢の長短は、その心肺機能、つまり有酸素運動能力によって最も大きく左右され、この能力は下半身の運動、強さによって強化、維持されていく。「脚は突き出た心臓だ」とよく言われるのは、そういう意味である。
・心肺機能は、その七割ほどの強度の運動を長時間持続することによって鍛えられるものだが、自分なりの高速で自転車を転がし続ける時が、ちょうどその心拍数に当たる。さらに、この程度の速度なら、自転車はランニングよりもずっと長時間継続することができる。
・こうした有酸素運動能力が高い人はその細胞全般が若いものだが、必須条件が一つ、活性酸素対策が必要になる。有酸素運動によって空気から同時に大量に吸収してしまう活性酸素が、最悪の人間細胞老化物質なのだ。ポリフェノールが身体に良いというのは、これが活性酸素を中和してくれるからである。「アスリートは特に、活性酸素対策をしないと早死にする」と医者がよく語るのは、そういう意味である。緑黄色野菜やチョコレートなどを摂ると良い。

「日常生活において、三十分以内の距離なら自転車で!」
 こんな習慣があれば、いろんな知識を得つつよく考えられているということがないジム通いや下手な化粧品遣いよりも遙かに良い身体、皮膚が出来るものだ。ちなみに、有酸素運動が苦手なアスリートは、どれだけ身体を鍛えていても早晩デブになるだけである。プロテインなども飲みつつ筋肉をいくら付けても、その上に覆い被さって来る脂肪を取る力がないからである。それは、同じジムのウエートトレーニングだけをやってきた人々を長年見続けて来て、分かったこと。やっと10回までは出来る強度の強いウエートトレーニングを身体各部に適宜施しつつ、かつまた一時間程度は走ることができる人が、最も若くて良い身体や皮膚を持っているものだ。これらすべて、人の身体作りは科学に基づくべきものということだろう。
 顔の皮膚の若々しい張りでさえ、どんな化粧品なども問題外の力で筋肉と血流の強さが保ってくれるということを、どれだけの人が知っているのだろう。顔などの皺が増えてくる、その皮膚が白っぽくなるなどもみな、筋肉、血流の衰えによるものである。

 因みに僕は身長169センチ、体重58キロ、体脂肪率13%内外と、ほぼ「生涯一体型」であり、礼服も30歳に作った「生涯一着」で済んで来た。その最も大きい原因を77歳の今色々考えてみて、若い頃身につけた運動習慣と、中でも特に自転車の習慣に、思い当たるのである。高校、大学の通学も自転車だったし、今の連れ合いとのデイトも自転車同伴で相乗りしたり、40代の10年ほどは片道9キロの通勤を自転車でやっていた。この40代の通勤が特に大きかったと振り返ることができる。また、今思えば、58歳でランニング入門をできて今もランナーでいられるのも、自転車のおかげと考えてきた。
 多少息づかいが荒い程度で、出来るだけ30分以上は乗るというのが、効果が高いやり方である。
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随筆 『 安渓「観音王」 』 文科系

2021年08月09日 10時04分49秒 | 文芸作品

 退職後も現役時代の延長のようにボランティアとして中国に通い続けているある友人から、中国茶を貰った。金属の小箱に「観音王」と書いてあるから、いわゆる鉄観音だろうという以外には何の知識も湧かないものだ。それが、もの凄く美味い。日本茶はもちろん、紅茶も中国茶もいろいろと試してきた僕として、即、礼状メール。
『今、連れ合いとお土産の鉄観音の方を飲んだばかりだ。中国流の「青茶」、半発酵茶として超有名なのだが、プーアルやジャスミンはおおいに飲んできたのに、鉄観音を自分で煎れたのは、実は初めて。ふたりで「美味いねー!」と言い続けている。僕の感じでは、青っぽい高貴な味は最高級煎茶と同じもの。それに、独特の発酵の若やいだ香りというのかが混じって、もう最高。加えて、さっきから既に同じ茶葉で五煎はやったんだが、あの大きな茶葉からはその味がほとんど無くならない。質問がある。中国のどの街の、どういう所で買ったの? それとも、有名百貨店などには大体売っている品物なのかな?』
 対する友人の返事が、こう。
『中国茶の件、こちらこそ礼を言いたいくらい。というのはこれまで多くの友人に高級なお茶をプレゼントしたが、殆どの人はその価値を分かってくれなかった。こんなに喜んでもらったのは初めてでとても嬉しい』
 あの茶自身への質問に友人が答えていないところを見ると、彼もあれの氏素性を知らないのだ。そこでまた、こんなメール。
『中国茶のことだけど、煎れ方までを説明できると貴方の友人にも良いのだが。(中略)あれはこんな感じかな。「茶葉はあの一袋が日本式高級煎茶湯飲みで二人分程度、九十度ぐらいにして、二分待つ」。中国では多分、熱湯を注ぐのだろうけどね。これで、一揃目は香りをかぐ程度のものになって、二揃目(これも心持ち湯冷ましする。三揃目でも僕は冷ますね)から俄然味が出て美味くなり、何回も煎れられる。お茶が上手くなるコツは、お湯を入れて待つ間に、ちょこちょこっと味見をしてみること。すると、「いま出す」「もうちょっと待つ」など、その茶の一番良い味が分かってくるのね。(中略)今後新しいお茶があったら「これどう出すの」と僕に聞けば、研究したげるよ。それから友だちにあげればどう?僕が得しちゃうけど、試供品程度でヨイからね』
 こんな返事が返ってきた。
『おはよう。心にグッとくるメールをありがとう。味オンチの私にはこの鉄観音の良さが余り分かっていないようで恥ずかしい。でもこれだけ味が分かり喜んで頂ける人に飲んでもらうのは、このお茶にとっても幸せなことかもしれないね』
 そこで僕は思い付いて、友人に頼るのではなく自分でこの茶の正体を調べてみた。
 中国は福建省の安渓県鉄観音、中国最高の代表的な鉄観音である。缶を改めて読んでみたら米粒のような字でちゃんとそう書いてあった。さらに、ウィキペディアで、こんな事も分かってきたのだった。
【「安渓鉄観音──南岩鉄観音とも呼ばれる最も代表的な鉄観音である。福建省の安渓県を中心とした地域で生産されている。そのうちでも最上級銘柄として扱われるものに「正ソウ観音王」(ソウは木偏に叢)がある】
 このお茶がまさにこの「正欉観音王」かどうかはさておき、僕も自分でこれを買おうと思って調べてみた。またびっくりなのである。この種のものを日本輸入店から買うとまず、百グラムが三千円~三千五百円とある。本当に驚いた。僕がつきあっている掛川の日本茶直売センターの最高級煎茶でも二千五百円。これはずば抜けて高くって一度しか買った事がない。僕の普段のは、玉露以外なら奮発しても千円なのだ。
 さてさて、ここまで訊ねたらもう現物探しというわけで、デパートへと繰り出した。結果を先に言うと惨憺たるものだった。先ず三越に行って二店二種あったうちで、期待薄を承知で一品購入。松坂屋はそれより高価なのを試飲させてくれたけど、一口飲んでサヨウナラ。仕方がないので足を伸ばして、高島屋。ここは三種あって、先のネット・カタログよりも高い「王級 鉄観音」というのを三十グラムだけ買ってきた。すぐに二つを飲んでみたが、前者は問題外、後者も今一歩。鉄観音には清香と濃香の二種があるらしいが、僕が好きなのはどうも焙煎の薄い清香の方らしい。そして、これがべらぼうに高いらしい。頂いたものは、本物の「正欉観音王」かも知れないなんぞと、そんな気もしてきたものだ。
 さて、以上の一部始終を友人にメールでお知らせした。そして、こんな言葉で締めくくった。
『僕は、自分の舌に自信を持つことができて、それが嬉しい。二千年を遙かに超える茶の伝統がある中国の歴代生産者たちを訪ねていったような気もするしね。その最高傑作のことを、あれこれいろいろと、尋ねてきたような』

 

(2011年3月、同人誌に初出)

コメント (2)
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