松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

鳥人高梨沙羅、その比類なき飛型。

2016-02-05 16:46:12 | 日記・エッセイ・コラム

 スキージャンプワールドカップ。ニュースがいつも先で、結果が分かってしまいますが、それでもBSで見ています。分かっていても、見たいです。楽しいです。それはあまりに美しいから。

 第10戦は、女子では数少ないラージヒルです。対応できない選手が多い中、怖いもの知らずの選手も何人かいます。助走スピードもノーマルヒルに比べものにならない、時速90kmを超えます。それでも果敢に前傾を保ち、恐怖心に打ち勝ったものだけが勝者となります。

 地元ノルウェーの若いルンビー選手が、1回目に136mを飛んで2位になります。高梨は137.5m。2回目ルンビーが大ジャンプ。競技開始から比べると、ゲートを4段下げたにもかかわらず、ヒルサイズの134mを飛びます。下で待っていた同僚たちが、優勝したような、はしゃぎようです。しかし高梨はさらに2段下げての助走です。それでもいつものように、台を蹴ったあとの姿勢の保ち方が速い。横風に振られることもなく同じ形のままK点を超え、このあとの傾斜が緩くなる直前のヒルサイズの斜面に、何事もなかったかのように着地します。

 他の選手はヒルサイズのジャンプでは着地の手前で早めに動作に入ります。なんたって衝撃がありますから。あの総合2位をキープしているベテラン、イラシュコ・シュトルツでさえ、しりもちをつきそうになります。ここでも昨年からしっかり覚えた「テレマーク」を入れ、ルンビーより2m遠い136mを出します。スローで再生された高梨のジャンプは、ため息が出るほど美しいです。

 表彰式後のインタビューでは、次の11戦を聞かれて、「前掛かりにならないように、気を付けます」と言っていました。どこまでチャレンジャーなんだ、と思いました。やっぱりラージヒルでは、頭から突っ込んでいく意識があったんだ、と思いました。まったく飛ぶために生まれたような鳥人高梨沙羅です。英語でインタビューされた時は、ラージヒルは好きですかと聞かれ、「好きですが、まだ勉強中です」みたいな答え方でした。どこまで謙遜すれば、気が済むんじゃい。オリンピックの前も、後も、あなたは誰もが認める第1人者ですばい。

 ただね、心配はあります。日本人だけが喜んでいるんじゃないか、という。競技全体が盛り上がらないと、観客は離れていきます。札幌も蔵王もたくさんの人が見に来ていました。ノルウェーは、そんなに居なかったような気がします。またルール変更とか、次のオリンピックまでは、何かありそうな気がします。だから喜べるうち、たくさん彼女の姿を目に留めたいと思います。

コメント
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