徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

べらぼうめ!ー年寄りいじめの‘酷税’ー

2008-08-28 15:00:00 | 寸評
老夫妻は、部屋の片隅で向かい合っていた。
夫は72歳、妻は68歳だ。
夫は、年金生活をしながら、警備員として働いていた。
給料は7万円で、そこから半分も税金を天引きされたと言って、怒っている。
 「ふざけた話だよなあ。こんなに少ない給料から半分も持っていかれてるんだぜ」
 「収入が多いわけでもないのに、税金てそんなに高いの?どうして?」
 「どうしてなんだか・・・」
生活が立ちゆかなくなったので、夫はさらに別の会社でも雑役として働き始めた。
年金だけでは、暮らしてゆけない。
いまだに、住宅ローンを抱えていた。
それに、持病があって病院にも通っているし、いろいろとかかる。
最近になって、妻も2ヵ所をパートでかけもち、働き始めた。
 「あたしたちみたいの、ワーキングプアっていうのね」
 「そうだ」
夫婦は、顔を見合わせると悲しそうに笑った。

国民健康保険料は、月々18000円を支払っていた。
妻は吐き捨てるように言った。
 「それがね、先月末に通知が来たのよ。区役所から」
 「何て?」
 「あなたの保険料は、この次から36000円になりますって」
 「何だい、それ?」
 「ほら、見て頂戴」
と言って、妻は区役所から届いた青い封筒を夫に見せた。

翌日、勝気な妻は区役所の窓口へ出かけていった。
どうしてこんなことになるのか、問い合わせた。
簡単な答えが返ってきた。
担当の職員は、まともに妻の方も見ずにぶっきらぼうに言った。
 「あなたの収入が増えたからです」
 「えっ!収入が増えたって、いくらでもないわ」
 「ええ。たとえいくらでも、増えた分が新たに加算されるんです」
 「何ですって?あたし、何も好き好んで働いてるんではないんです」 
 「・・・」
 「この年で、まだ住宅ローンも残っているし、借金もあるんです」
 「・・・はあ?」
 「でも、わたしは幸い病院にはかかっていないわ。保険証をどこかに失くしてしまったくらいなのよ」
 「・・・」
 「それで、この前には、住民税だったかしらね、一期分、6万7500円を6月中に払えなんて、通知もきたわ」
 「はい。そういうご通知を差し上げました」
 と担当の職員は、涼しい顔をして平気で言うのだ。
 「だって、あなた、年度全額で26万2500円もですよ!」
妻は声を荒げ、ワナワナしながら、職員にたてついた。
これには、一緒について来ていた夫もびっくりした。
 「そうですね。5%から10%に税率が上がったから、そうなったんです」
 「それじゃあ、あんまりにもべらぼうすぎやしませんか?」
 「いいえ。ちゃんと計算して、皆さんに平等に納めて頂いてるんですよ」
 「働かずに、病院通いをしろと言うんですか!」
思わず、大声になっていた。
 「それは・・・、ご自由にどうぞ」
 「・・・」
妻はあきれて物も言えず、夫の顔を見た。

帰り道で、妻は夫に言った。
 「どうぞご自由にですって。何でしょう、あの言い草!・・・聞いてたでしょう?」
 「ああ。いやな役所だな」
 「まったくだわ。それにね、あなた、次から二人分の介護保険料がまた大幅に上がるのよ」
 「何だって?!この間も上がったばかりじゃないか!」
 「そうよ。もう滅茶苦茶よ」
 「う~む」と、夫の顔が険しくなった。
 「年寄りは、早く死ねと言ってるのね」
 「そうだ、そうだな」
そう言って夫は空を見上げた。
冷たいものが、顔に落ちて来た。
大きな雨粒であった。
夫は、妻の方を向いて、苦虫をかみつぶしたような顔になって、ぽつりと言った。
 「涙雨だ。天も泣いてるんだ・・・」
 「いやな世の中ね。税金の無い国に逃げ出したいわね。無人島でもどこでも・・・」
 「ああ。だけど、そんなに、どうせ俺たち生きていやしないよ」
 「それもそうね。・・・となると、やっぱり我慢しかないのね、あと少し・・・」
夫は黙ってうなずき、妻はため息をついた。
夫は自分の痩せた手を、妻の痩せた肩にあてると、
 「さあ、早く姥捨て山へ帰って、安い焼酎でもやろう」


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3 コメント

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shara様、茶柱様。 (Julien)
2008-08-30 21:10:20
同感です。
高齢者は前期、後期など言わずに、等しくこれまでの国のための功労者なのですから、もっと大切に考えるべきですね。
とくに、戦時中の働き手が、いま高齢期を迎えて、今日があるのですから・・・。
人は誰でも年を重ねていくのですし、今の若い世代も、確実に老いてゆくのです。
人を差別してはいけないと思います。

それにしても、この格差社会、政治の無力、無気力、体たらく、やりきれなさ、どうにかなりませんか。
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若年層も悲惨な物です。 (茶柱・・・)
2008-08-29 01:53:00
問題は「公平と言う名の不公平」。
一律負担と言ったって、年収一千万と百万とでは同じ1万8千円の価値が違う。同じ5%(消費税)と言っても、一千万のうちの5%と百万のうちの5%とでは重みが違う!

それでいて未だに「金持ち減税が横行している」。どういうこっちゃネン。一億円もの資産なんて、いくら減税されようが使い切れる物ではないというのに・・・。
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Unknown (shara)
2008-08-28 19:57:48
私の主人も働いています。
本当に驚くほどの税金と
保険料を払っています。
戦時中一生懸命生きてきた
世代に対して、ひどい扱い方です。
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