この作品では、妖気漂う神秘的な世界が展開する。
「ゴッドファーザー」3部作や「地獄の黙示録」で輝かしい作品の数々を作り上げてきた、フランシス・F・コッポラ監督が、推理作家エドガー・アラン・ポーを題材に描く妖しいミステリーだ。
注目すべきは、コッポラ監督の娘ソフィア・コッポラが、妖艶な謎の少女として登場することだ。
これはもう、オカルト的な映画芸術の世界だ。
二つの殺人事件のカギを握るのは、少女Vである。
人は、このような怪異なドラマをゴシック・ミステリーとも呼んでいるようだが・・・。
ミステリー小説かボルティモア(ヴァル・キルマー)が、サイン会のために訪れた、アメリカ郊外のとある奇妙な街・・・。
そこには、盤面が7つもある“呪われた”時計台が街にそびえたち、狂気を象徴するかのようだったが、それ以外は何の変哲もない街であった。
その街でつい数日前に、胸に杭を打たれた身元不明の少女が発見されたばかりだった。
彼は、ミステリー好きの保安官ボビー・ラグレインジ(ブルース・ダーン)に、この事件を題材にして小説の共著を持ちかける。
ボルティモアは、かつてエドガー・アラン・ポーが宿泊したとされるチャリング・ホテルで起きた、凄惨な殺人事件を知る。
作家は、謎の少女V(エル・ファニング)の誘われ、ときにエドガー・アラン・ポーの幻影に導かれながら、現在と過去の二つの事件の真相を紐解いてゆく。
その先に、予想しようもない結果が待ち受けているとも知らずに・・・。
巨匠コッポラは、何とも妖しく幻想的な世界へと、観る者をいやがうえにも引きずりこんでいくのだ。
過去と現在の殺人事件を、夢と現実の間で巧みに交錯させながら、平行し、紐解いていくという、小説世界を絵にしたような構造がまたやや不可思議である。
少女と子供たちの幽閉されている教会、そこに戯れる彼ら、そして不気味な恐怖の中に耽美と妖気の漂う世界・・・。
少し気味が悪いが、少し面白い。
夢とうつつの世界をさまよいながら、やがて充満する残酷な暴力の匂いは、何だろうか。
アメリカ文学で有名なエドガー・アラン・ポーの死と憂愁の美学は、この作品の中でもいかんなく発揮されている。
作品では、夢の中でポーに道を教えられる小説家ボルティモアだが、コッポラ自身も、このミステリーの製作過程でポーに道を教えられたようだ。
ポーの幽霊は、若くして亡くなった彼の妻ヴァ―ジニアなのだそうだが、少女Vとつながるものがある。
残酷さ、危うさ、神秘的な謎と雰囲気に彩られたこの映画の世界は、幽明相接するミステリーの形をとって、どこまでも妖しく迫ってくるのだ。
アメリカ映画「Virginia ヴァージニア」は、巨匠新生フランシス・F・コッポラ監督とエル・ファミングが誘う、妖しきミステリー・ワールドなのだ。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
ブログ上に取り上げない作品もあるのですが、この作品が、今年の締めの1本となりました。
今年も、いろいろな映画を、独断と偏見(?!)で取り上げてきました。
映画だけではなく、そのほか社会諸々のことどもを、見たまま感じたまま、つれづれなるままに綴らせていただきました。
もう数時間で、新年を迎えます。
来年は、どんな作品を観ることになりますか。
どうぞ良い年をお迎えください。
有難うございました。