徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「マチルダ 禁断の恋」―滅びゆく帝政ロシアを舞台にくり広げられる宮廷悲恋絵巻―

2019-01-27 12:15:00 | 映画


 この作品は、ロシア公開時に、ロシア正教会の信徒や過激派が上映中止運動や放火事件を起こすなどがあったが、本国だけで210万人が見た話題作といわれる。

 古典的な純愛物語に過ぎないが、宮殿やバレエのシーンの豪華さは、ロシア映画の持つ底力を久しぶりに感じさせるものだ。
 気鋭のロシアの監督、アレクセイ・ウチーチェリが、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世と、マリインスキー・バレエ団の伝説のプリマと謳われたマチルダ・クシェシンスカヤの、許されざる恋の実話を大胆かつ華麗に描き上げた。




1890年代のサントペテルブルグ・・・。
ロシアの王位継承者であるニコライ2世(ラース・アイディンガー)は、世界的に有名なバレリーナのマチルダ(ミハリナ・オルシャンスカ)を一目見た瞬間恋に落ちる。
二人は惹かれあうが、ニコライにはアリックス(ルイーゼ・ヴォルフラム)という婚約者がいた。
ニコライは、皇帝の座と真実の恋のはざまで揺れ動く。
燃え上がる彼らの恋は、ロシア国内で賛否両論を巻き起こし、国を揺るがすほどの一大ロマンスとなる。
父の死、王位継承、政略結婚、外国勢力の隆盛と、滅びゆくロシア帝国とともに、二人の情熱的な恋は引き裂かれようとしていた・・・。

当時、ニコライ2世といえば、国内では「聖人」として神格化されていた人物だ。
この作品をめぐって、皇帝の名誉を傷つけるとして賛否両論が飛び交うのはもちろん、ウチーチェリ監督を尊敬していたプーチン大統領が参戦したり、キリスト教過激派も登場し、俳優たちも安全上の理由でプレミア上映会を欠席するという事態にまで発展したのだった。
実話にもとずく物語だけに、ロシア全土を巻き込んだセンセーショナルな話題作となった。

エカテリーナ宮殿ももちろんだが、世界三大バレエ団であるマリインスキー・バレエ団の壮麗な舞台が再現され、圧倒的なスケールと豪華絢爛たる映像美は見逃せない。
総体的な軽やかな仕上がりで、恋愛映画としては小品(?)としてのまとまりもよく、片意地張らずに楽しめ作品となった。
ただし、皇帝ニコライの味付けが薄い。
あまり葛藤が感じられないのはどうしてか。
平民であるマチルダと皇族のアリックスの関係など魅力的に描かれているが、マチルダを選ぶということは帝位を譲ることになる。
この恋の試練は、ニコライの、帝位を継ぐのか放棄するのかという選択になる。
不倫の結果は、大体破滅に向かうというのがロシア文学では多いようだが、ニコライの悲劇はさてどうであったろうか。
この愛と官能の欲求を描いたロシア映画「マチルダ 禁断の恋」は、ヒロインの人生を自分で掴み取ろうという野心を一杯に感じさせて、結構面白く見せる。
        [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
この作品、関東一円での上映を終えており、現在近県から全国各地へと、上映館は順次静かに広がりつつあるようだ。

次回は日本映画「雪の華」をとりあげます。


映画「マダムのおかしな晩餐会」―刺激であれ毒気であれ人生はごちそう映画で楽しみたい―

2019-01-14 12:45:00 | 映画


 明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願い申し上げます。
 寒い日はまだまだ続きそうです。
 風邪などひかないように気をつけたいものです。

 映画の方は、フランスアマンダ・ステール監督が、上流階級の男性とメイドの純愛を描いたロマンティック・コメディだ。
 隠し味いっぱいの晩餐会とはどんなものだろうか。
 客の紳士が、とある一人の女性にひとめ惚れしたことから起こる、セレブ界のちょっとした騒動だ。
 作品に描かれる、セレブと庶民の苦い笑いが見ものである。
 総じて、観て損のない辛口の社会批判でもある。



裕福なアメリカ人夫婦のアン(トニ・コレット)とボブ(ハーヴェイ・カイテル)が、パリに越してきた。

セレブな友人たちを招いて、豪華なディナーを開こうとするが、出席者が不吉な“13人”になってしまうことから、大慌てでスペイン人メイドのマリアロッシ・デ・パルマをレディに仕立て上げ、晩餐会の席に座らせる。
そこでマリアは緊張のあまり、お下品なジョークを連発、これが逆に大うけして、イギリス紳士デビッド(マイケル・スマイリー)から求愛される。
思わぬ恋に舞いあがるマリアだが、晩餐会ではフランス人富豪から堂々と不倫の申し込みをされ、彼女は時ならぬときめきを覚える。
ヨーロッパの社交界から移民たちのメイド界までも巻き込んだ、この大いなるから騒ぎの行方はどうなることやら・・・。

身分違いだとして、デビッドから身を引くように迫られるアンナ、そんな彼女にこれが自分の生き方と突っぱねるあたり、爽快な感触も・・・。
恋というなら、いまとは身分の差などで一瞬で無意味ともなるが・・・。
はじめは気後れしながらも、下品なジョークの連発とデビッドの好奇心をそそったりするマリアは、気取った会話の客たちやイケメン俳優やハッピーエンドへの愛着を披露する。
デビッドとマリアのことを聞かれた息子まで大嘘をつく。
ボブは、所有しているカラヴァジョの絵を美術館オーナーに売ろうとしていて、仲介者のデビッドがへそを曲げはしないかと心配だ。
その時の口説き文句が決まってる。
「結婚生活には不倫が必要だ」

メイドの分際で恋に落ちたマリアと、彼女に夢中のデビッドへの嫉妬に狂うアン、使用人が主人を怒らせたらどうなるのだ。
上流階級は庶民の侵入を許そうとしないだろう。
この上流と庶民の間の隔たりは大きい。昔だって今だって変らない。
アマンダ・ステール監督は、一般庶民とセレブの間の見えない「階級(格差)」という鎖が、いかに人間の心を縛っているか暴いていく。
英語、フランス語、スペイン語の乱れ飛ぶフランス映画「マダムのおかしな晩餐会」は、スキャンダラスなゴシップをのぞかせながら、刺激と毒気がたっぷりと仕込まれたロマンティック・コメディの佳作である。
ハリウッドとヨーロッパの個性派の競演も面白い。
新進気鋭の女流監督アマンダ・ステールは、1978年生まれ、作家、脚本家としても活躍しており、今後が大いに期待される。
ハイブランドのドレスやジュエリー、絵画をはじめ、通好みのパリの名所の数々が登場して楽しくもある。
         [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
次回はロシア映画「マチルダ  禁断の恋」を取り上げます。