朝遅いバスの中で、聞くともなしに聞こえてきました。
「近頃、ちっともめずらしいことじゃないわよ」
「そうかしら」
「でもねえ、あたしたちにはとても出来ないわね、あんなこと」
「そうよねえ」
「お母さんは知っているのかしら」
「まさか・・・」
「そうよねえ」
「おたく、お嬢さんいらしたわね?」
「あら、うちの娘にかぎってそんな・・・!」(誰もがそう思っている)
「そうは思っても、わからないものよ」
「躾けって、大事よね」
「家庭教育、ちゃんとしないとね」
教育談義になってきました。
おもわず見ると、やりとりをしている二人の視線の先に、若い女性がいました。
まさに一心不乱、堂々と化粧の真っ最中だったのです。
頬紅から、口紅まで・・・入念に。
見ている人、見て見ぬふりの人、無関心の人、一切お構いなく・・・。
なるほど・・・。ふむ、ふむ・・・。
そういえばいつだったか、横須賀線の車内でも同じ光景を見ました。
こんなこと、いまではもう当たり前だという人がいました。
家の外へ一歩出たら、帰ってくるまで、どこで何をしていても、
子供たちの行動のデテールなど誰も知るよしはないのです。
まあ、身だしなみは、大いに結構なこととしても・・・。
これも、公衆の面前でとなると、あまりほめられたものではありません。
気分は灰色・・・です。