徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「レッドクリフ」―ど肝を抜く歴史絵巻―

2008-11-06 07:00:01 | 映画

構想18年、制作費100億円と言われる。
「三国志」が、1800年の時を経て、愛と勇気の伝説として甦った。
中国、アメリカ、日本、台湾、韓国合作の、中国の鬼才ジョン・ウー監督の大作だ。
すぐれた知将たちの戦略戦が、2時間半観客を圧倒する。
ハリウッドも驚くような、ダイナミックな映画がアジアに誕生したものだ。

西暦208年、中国は、魏・呉・蜀の三国が争っていた。
魏の曹操(チャン・フォンイー)は、80万人の大軍と2000隻の戦艦を率いて、他の二国を圧倒していた。
呉の孫権軍の知将、周瑜(トニー・レオン)と、蜀の劉備軍の軍師、孔明(金城武は同盟を結び、たった5万の兵士でこれに立ち向かった


陸と水上から攻め入る、巨大な帝国の支配者、曹操との圧倒的な差を覆すために仕掛けられた、連合軍の奇策とは何であったのだろうか。
人徳の司令官周瑜、知略の軍師諸葛孔明らの、手に汗握る、迫力ある場面がこれでもかこれでもかと展開する・・・。
呉の猛将役にも、中村獅童ら個性豊かな人物が配置され、大河ドラマにふさわしい群像劇となっている。

ドラマは、曹操の野望の陰に隠された、周瑜の美人の妻小喬(リン・チーリン)を奪うという執念の炎を燃え上がらせて、有名な「赤壁(レッドクリフ)の戦い」へと、否応もなく突き進んでいく。
知恵と勇気を振り絞って、愛する者たちを守ろうとする戦いは、中国の歴史そのものを、大きく揺るがしていくことになるのだった。

「赤壁の戦い」は、三国志の中でも、最も熾烈な戦いと言われる。
世に、伏龍の異名をもって呼ばれた男、諸葛孔明が、27歳にして世に出た最初の正念場であった。
「九官八卦の陣」と呼ばれている、孔明の兵法の凄さが解る。
円陣を作って、罠に嵌めたあとで形を変え、改めて多数の陣形を作るのだ。
もともとは、亀の背中に書かれた魔方陣(亀の甲羅を形どった布陣)から考案され、孔明が工夫に工夫を重ねた陣形なのだそうだ。ここは、大軍に一泡吹かせる、今回の壮大なクライマックスシーンだ。

劉備は孔明を軍師として迎え入れるために、三度にわたって孔明を訪ねた。
この故事から、「三顧の礼」と言う言葉が生まれたことはよく知られている。

映画「レッドクリフ PARTⅠ」は、とにかく見どころ満載だ。
人間同士の葛藤や愛憎が渦巻いていただろうが、そのあたりの描写よりも、この作品の大半はどうしても合戦シーンなので、観ている方は結構疲れる。
それでも、来年4月に公開予定の続編PARTⅡがいまから期待される。

ジョン・ウー監督は、黒澤明監督の名作「七人の侍」を何度も見て、参考にしたと語っているように、かなりの影響を受けたことは事実のようだ。
本作の、豪快で緻密な演出は特筆に値する。