構想18年、制作費100億円と言われる。
「三国志」が、1800年の時を経て、愛と勇気の伝説として甦った。
中国、アメリカ、日本、台湾、韓国合作の、中国の鬼才ジョン・ウー監督の大作だ。
すぐれた知将たちの戦略戦が、2時間半観客を圧倒する。
ハリウッドも驚くような、ダイナミックな映画がアジアに誕生したものだ。
西暦208年、中国は、魏・呉・蜀の三国が争っていた。
魏の曹操(チャン・フォンイー)は、80万人の大軍と2000隻の戦艦を率いて、他の二国を圧倒していた。
呉の孫権軍の知将、周瑜(トニー・レオン)と、蜀の劉備軍の軍師、孔明(金城武)は同盟を結び、たった5万の兵士でこれに立ち向かった。
陸と水上から攻め入る、巨大な帝国の支配者、曹操との圧倒的な差を覆すために仕掛けられた、連合軍の奇策とは何であったのだろうか。
人徳の司令官周瑜、知略の軍師諸葛孔明らの、手に汗握る、迫力ある場面がこれでもかこれでもかと展開する・・・。
呉の猛将役にも、中村獅童ら個性豊かな人物が配置され、大河ドラマにふさわしい群像劇となっている。
ドラマは、曹操の野望の陰に隠された、周瑜の美人の妻小喬(リン・チーリン)を奪うという執念の炎を燃え上がらせて、有名な「赤壁(レッドクリフ)の戦い」へと、否応もなく突き進んでいく。
知恵と勇気を振り絞って、愛する者たちを守ろうとする戦いは、中国の歴史そのものを、大きく揺るがしていくことになるのだった。
「赤壁の戦い」は、三国志の中でも、最も熾烈な戦いと言われる。
世に、伏龍の異名をもって呼ばれた男、諸葛孔明が、27歳にして世に出た最初の正念場であった。
「九官八卦の陣」と呼ばれている、孔明の兵法の凄さが解る。
円陣を作って、罠に嵌めたあとで形を変え、改めて多数の陣形を作るのだ。
もともとは、亀の背中に書かれた魔方陣(亀の甲羅を形どった布陣)から考案され、孔明が工夫に工夫を重ねた陣形なのだそうだ。ここは、大軍に一泡吹かせる、今回の壮大なクライマックスシーンだ。
劉備は孔明を軍師として迎え入れるために、三度にわたって孔明を訪ねた。
この故事から、「三顧の礼」と言う言葉が生まれたことはよく知られている。
映画「レッドクリフ PARTⅠ」は、とにかく見どころ満載だ。
人間同士の葛藤や愛憎が渦巻いていただろうが、そのあたりの描写よりも、この作品の大半はどうしても合戦シーンなので、観ている方は結構疲れる。
それでも、来年4月に公開予定の続編PARTⅡがいまから期待される。
ジョン・ウー監督は、黒澤明監督の名作「七人の侍」を何度も見て、参考にしたと語っているように、かなりの影響を受けたことは事実のようだ。
本作の、豪快で緻密な演出は特筆に値する。
最新の画像[もっと見る]
- 川端康成 美しい日本~鎌倉文学館35周年特別展~ 4年前
- 映画「男と女 人生最良の日々」―愛と哀しみの果てに― 5年前
- 文学散歩「中 島 敦 展」―魅せられた旅人の短い生涯― 5年前
- 映画「帰れない二人」―改革開放の中で時は移り現代中国の変革とともに逞しく生きる女性を見つめて― 5年前
- 映画「火口のふたり」―男と女の性愛の日々は死とエロスに迫る終末の予感を漂わせて― 5年前
- 映画「新聞記者」―民主主義を踏みにじる官邸の横暴と忖度に走る官僚たちを報道メディアはどう見つめたか― 5年前
- 映画「よ こ が お」―社会から理不尽に追い詰められた人間の心の深層に分け入ると― 5年前
- 映画「ア ラ ジ ン」―痛快無比!ディズニーワールド実写娯楽映画の真骨頂だ― 5年前
- 文学散歩「江藤淳企画展」―初夏の神奈川近代文学館にてー 5年前
- 映画「マイ・ブックショップ」―文学の香り漂う中で女はあくなき権力への勇気ある抵抗を込めて― 5年前
三国志演義は私、あまり詳しくないのですが、今でも熱狂的なファンの多い作品ですよね。
お茶の間で待ちます(笑)。