徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ラフマニノフ ある愛の調べ」―白いライラック―

2008-11-04 13:00:00 | 映画
あるかなきかの風に乗って、枯葉が舞い落ちている・・・。
ピアノ協奏曲第二番 ― そう、あの魅惑的な名曲である。
最も弾きこなすことが困難な名曲を生み出す作曲家であり、超絶的な技巧を持つと言われる音楽の魔術師、セルゲイ・ラフマニノフの秘められた愛がここに綴られる・・・。
あの、不滅の名曲の誕生秘話である。

パーヴェル・ルンギン監督ロシア映画だ。
時代を超えて、人々を魅了する名曲を世に送り出したラフマニノフ・・、彼は驚くほど波乱の人生を送った。
生家の没落、恩師との決別、初めての交響曲の失敗、作曲家生命の危機、ロシア革命と亡命、そしてアメリカでの第二の人生・・・。

そんなラフマニノフの人生に、彩りを添えた三人の女たちがいた。
何もかも全てを捧げた初恋、短く燃えた美しい恋、苦悩する心を支え続けた愛・・・、その中から、数々の叙情的な、時にダイナミックに心を揺さぶる旋律が生まれてきたのだった。

1920年代、ラフマニノフ(エフゲニー・ツィガノフ)のニューヨークでの初コンサートがあった。
その夜、カーネギーホールは、熱狂的な感動に包まれていた。
人々は、目の前で繰り広げられる音楽の奇跡に、惜しみない讃辞を贈り続けた。
ただ、アメリカでの大成功とは裏腹に、ラフマニノフは、日々の多忙、募る強い望郷の念から、日に日に憔悴していった。
そして、新しい曲が書けなくなってしまっていたのだ。

そんなある日、ラフマニノフのもとに、贈り主不明のライラックの花束が届けられる。
その白い花の甘い香りは、切なく情熱的だった愛の日々を彼に甦らせるものだった。
ラフマニノフが募る思いを交響曲に捧げた年上の女アンナ(ヴィクトリア・イサコヴァ)革命に燃える瞳に心を奪われた女マリアンナ(ミリアム・セホン)そしてどんな時も傍らで自分を支え続けてくれた女ナターシャ(ヴィクトリア・トルストガノヴァ)・・・。
贈り主の分からない花束は、届き続けられる。
一体、誰が花束を送り届けてくるのだろう・・・?
ラフマニノフの心には、愛の記憶に導かれるように、新しい旋律が生まれて来ようとしていた。

天才ピアニストにして、天才作曲家の、ラフマニノフの名曲誕生に関わる物語は、どのようにして紡ぎだされたのか。
彼の伝記を知る意味でも、大いに興味深いものがあるけれど・・・。
ロシアからアメリカへの亡命、そしてその生涯をアメリカで過ごした、ラフマニノフの複雑な苦悩の内を、作品の中で、もっと深く掘り下げて描いて欲しかった気がする。
ロシア映画「ラフマニノフ ある愛の調べは、白いライラックに託された、詩情を感じさせる小品である。