日本の企業が海外で仕事をする場合、多くのリスクを抱える。しかし、リスクはどこにでもあることだが、そのリスクをどのように少なくすることも企業としての責任でもある。今回、アルジェリアで起きた事件は勝たして事前に防禦することが出来たのであろうか。国際級エンジニアリング会社・日揮は多くの海外プロジェクトを手掛けている。特に、石油精製、石油化学、ガス化学に於いては世界でもトップクラスの企業である。プラントを造ることは東南アジア、中近東、北アフリカでは当たり前の仕事であるが、それだけにテロ組織の狙われやすい。
今回は、プロジェクト遂行上必要な情報を集約するための会議を開くに当たり、主要企業のトップクラスの人間が集まっていた。会議の開催の情報は企業秘密になっており、その情報をだれが、どのような方法で、誰に流したかである。情報漏えいが行われたとしたら、だれの指示でなされたのか。当然考えられることは、情報漏えいをした本人は既に抹殺されているであろうことは想像できる。
プラントエンジニアリング会社の仕事の殆どが海外である。日揮と同業である千代田化工建設、東洋エンジニアリングでも海外ジョブに対する様々なリスクについては考慮しているが、今回のような事件には今までにあったことはないだろう。テレビや新聞では、多くの情報が秘密となっているために想像で描かれたり報道されたりしているが、テロ組織を刺激しないためにも報道は秩序正しく行われる方がいいのではないか。勿論、報道の自由と云うことは正しいかもしれないが、一方では人命を守るためには余り激しく行動を起こすことは芳しくない。
昨年は中国で企業が襲撃され遠くの損害を被った。物的損害で済んだが、今後はそれだけで済む保証はない。中国も低開発国並みの国なのだから安心はできないはずだ。アルジェリアは、日本のエンジニアリング会社・日揮が率先してプロジェクトを進めてきたのだが、テロ組織の標的にされたことで何らかの方策を立て直さなければならないだろう。中近東には、日揮以外の日本のエンジニアリング企業の多くがプロジェクトに参加している。情報の取り扱い方にも工夫をしなければならなくなった。リスクが高い仕事だが、だからと云ってプロジェクトに参加できないことになれば、日本にとっては大きなマイナスになる。
亡くなられた日揮社員に対してご冥福を祈りたい。一企業の社員に対してとしてだけではなく、海外での活躍をしてきた日本人に対してである。海外での仕事は華やかに見えるかもしれないが、その反面リスクが高いのである。そのことは解ってあげてほしい。