①五平太の鍋焼きうどん
ほんの2,3日前、私は今日のように冷たい雨のそぼ降る中
とぼとぼと、車をコインパーキングに入れて
「五平太」目指し歩いていた。
食の情報誌にうどん特集を掲載するので、この店にどうしても
行く必要があった。
辿り着いて店の扉を開くと、店に立ち込める湯気、出汁の香り
それらが冷え切った私の体を包んだ。
こんな日は鍋焼きだ。本当はカレーうどんの話なので
カレーうどんを注文しなくていけないが、そもそも
カレーうどんは五平太にはなかった!
ありがたや。それで私は鍋焼きうどんを注文し
湯気が一杯立ってかすむような鍋のうどんを
おもむろに小皿に入れて頬張った。
有難い。うどんの温かさが体中に沁みて来た。
どんな贅沢なご馳走より、この日の私にはこのうどんだった。