カクレマショウ

やっぴBLOG

二つの権利─日本語字幕付きの邦画

2007-11-04 | └人権教育・学習
先日のある新聞の投書欄。「映画ファンの聴覚障害者」だという主婦の方が、「邦画すべてに字幕がほしい」と訴えています。

昨日から公開の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を楽しみにしているのだが、字幕付きの上映は、1ヶ月先に平日の2~3日間しか行われず、しかもその上映館は遠い。子ども向けの映画の場合、家族と楽しく映画の話ができないもどかしさや虚しさを感じる、といった友人の話も。

字幕付きの邦画は限られたフィルム数しかなく、全国の映画館を巡回するため、こういうことになるのでしょう。投稿者も触れていますが、聴覚障害者が登場する「バベル」は、全上映館で日本語のセリフにも字幕がつけられていました。これは、「聴覚障害者ら4万人が署名して配給会社が応えたから」です。投稿者は、「聴覚障害者も心おきなく邦画を楽しむことを望んでいる」として、すべての邦画に字幕をつけてほしいと言います。

高齢化が進んでいることもあって、聴覚に何らかの障害を持つ人は、人口の5%にものぼると言われています。「もともとバリアのない世界を最初から構築すること」をめざすというユニバーサルデザインの考え方からすれば、聴覚障害があるなしにかかわらず、「映画を楽しむ」ことができるようにするためには、すべての邦画に日本語字幕を付けることは、当然のことなのかもしれません。

にもかかわらず、最初この投稿を読んだときは、正直言って、心から賛同する気にはなれませんでした。かつて、「黒人差別」問題で、小さなことをあげつらい、それに敏感に対応した人たちがいたという事実と少し重なったからです。「一部」の聴覚障害者のために、なぜ「すべての」邦画に字幕をつけなければならないのか。聴覚障害者でない人たちにとって、邦画の字幕はまったく必要ない。「バベル」の場合は、日本語のセリフのシーンは一部でしかなく、日本語以外のシーンには当然字幕がついているわけですから、日本語に字幕がついていても、それほど違和感はありませんでした。私はこれまで見たことはありませんが、セリフがすべて日本語の映画で、全編に日本語字幕が付いている映画を見る機会があれば、たぶん、「字幕が邪魔だなあ」と感じてしまうと思うのです。できれば、邦画は字幕なしで見たい。

聴覚障害者の方には、「字幕付きで映画を楽しむ権利」があります。しかし一方で、聴覚障害者以外の人にも、「字幕の付かない映画を楽しむ権利」があるのです。もちろん、前者がこれまでなおざりにされてきたことは事実ですし、それをもっと社会的に認めていくことはとても大切なことです。それでも、後者がまったく無視されていいかというと、決してそうではないでしょう。

「すべての」ではどうなのかな?と思うわけです。両方の権利を尊重するためには、できるだけ字幕付きの邦画を増やし、上映回数も多くしていくこと、なのではないかと。聴覚障害者が人口の何%だからどのくらい、ということではなく、「できるだけ」便宜を図ろうとする姿勢が大切なのではと思います。「一部」だろうが「少数」だろうが、困っている人がいればそれは社会全体で支えていかなければならない。

で、少し考えてみたのですが、もし、私がこれから聴覚障害を抱えることになったとしたら…。

洋画に比べれば、それほど邦画は見ない方ですが、どうしても見たい邦画があったとして、字幕付きの上映が遠い町でしかやってなくて、しかも平日の昼間だとしたら、わざわざ足を運ぶだろうか…? その時になってみなければわかりませんが、結局、字幕付きで鑑賞できるDVDを待つような気もしますね。

 

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2 コメント

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字幕に感謝 (アメリカで外国人)
2007-11-06 04:57:29
アメリカに住んで、2年目、哀しきは英語です。
アメリカ人は、経済力にかかわらず、物を大事に使うことは知らないらしい。
ロハスなど、知識人の趣味に見えます。
しかし、障害者への配慮は、日本が見習うべきことは多いと思います。
確かに、邦画に字幕が入ったらうっとうしい。
しかし、字幕は、聴覚障害者のためでなく、日本語を勉強している人に、大変役立つ物です。
アメリカのテレビ番組の80%くらいは、リモコン操作により、英語字幕が入ります。
これが、英語の未熟者には大変ありがたい。
知っている言葉でも、外国人にとってヒアリングはとても難しいからです。
翻訳と違って、話し言葉を日本人が字幕にするのは、それほど大変ではないはず。
映画ではなく、お手軽なテレビ番組に、字幕が入ることを願います
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なるほど。 (やっぴ)
2007-11-07 12:27:28
コメントありがとうございます。

アメリカのテレビ番組は、多くが英語字幕付きで放送されているというのは、聞いたことがあります。なるほど、様々な言語を使う人が住むアメリカならではですね。

必要がある人だけが字幕付きで試聴できるようなシステムがあればいいのでしょうね。
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