人間というのは、見ること、あるいは見えることで、安心するらしい。だから、不思議と思えることや、謎や、未解明なことに関しては、目にして初めて、その解明の第1歩になると考えているようだ。木星でも、火星でも、写真を撮って、その分析を始める手法は、あらゆる分野で、共通しているように思える。アルツハイマー病という病気がある。老人にとってはもっとも厄介な病気である。放射線医学総合研究所(千葉市)のチームが発表したことだが、アルツハイマー病など認知症の原因物質の一つとみられるたんぱく質「タウ」が、患者の脳内に蓄積した様子を可視化することに成功したとのことである。可視化できれば、その「タウ」を取り除くことによって、解決されることになり、老人は長い恐怖から解放されることになる。ただ、ここでも、可視化である。このニュースを聞いていて、思うことは、可視化できた以前から、アルツハイマー病の原因の一つは、脳の海馬という領域に「タウ」というたんぱく質が蓄積し、それが脳の記憶などの働きを妨げているようだということは分かっていたに違いない。人間には残念ながら、目に見えなければ、処理できない。地球の生物の中には、モグラやイルカやコウモリのように、目に頼らずに的確に処理する能力を有する生物も多い。私の義理の兄は、後期の胃がんであったが、医師は手術で腹を開き、そして、目で見て、これは切除できないとあきらめ、兄はまもなく死んだ。
Y-FP Office Japan
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