NISA(少額投資非課税制度)の受付けが10月から始まる。そこで思うことがあります。この制度を政府が検討を始めた理由は日本人の金融資産に占める預金や債券といった安全資産の比率が高いことにありました。国際比較で見ても、現金・預金・債券の家計資産に占める割合は、アメリカが23%、ドイツが46%に対して、日本人のそれは54%と高く、投資として活用されない現実が、長い不況と相まって、その運用を求める声が金融界を中心に高まったのです。せめて、ドイツ並みに下げたいという声に押されて、政府が長い検討期間を終えて、このNISAの実施に踏み切った時、日本の家計の預金はどうなっていたでしょうか。世間ではあっという間に、金融資産0世帯が増え続けているのです。総世帯の1/4という多さです。長引く不況のせいではありますが、現実はNISAどころではありません。その対象者はその名が示す通り、大口の投資家ではありません。むしろ、今は金融資産0となっている方々を想定していたはずです。政府の検討期間中に、世の中が変わってしまったという事例は他にもあります。例えば、かつて、高齢者の皆様は裕福でした。だから、この皆さんにも負担を増やしていただこうと検討が重ねられ、今、いくつかが実施されようとしています。けれど、この5~6年で、高齢者の経済状態は急速に悪化しています。もう、かつてのような豊かな老人は少なくなっているのです。ですから、窮乏化しつつある老人たちに、政府は、老人は豊かだという幻想のままに、追い打ちをかけようとしているのです。
Y-FP Office Japan
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