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印象派誕生の理由

2010年10月04日 | うんちく・小ネタ

                                                               印象派として知られるモネやルノアールは日本でもっとも人気の高い画家です。

印象派の最大の特徴は光の表現。それまでの絵は室内の暗い照明の中で描かれることから、光というより影の部分を強調した、写実本位のものが主流になっていました。

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しかし、技術の進歩により、チューブ入り絵の具が開発され、画家たちは野外に飛び出すことが可能になり、降り注ぐ光のもとでの絵画表現が可能になったのです。

こうした中で1874年、モネ、ルノアール、セザンヌらによって展覧会が開かれました。この展覧会に出品した作品にモネは「印象 日の出」というタイトルをつけました。

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                              「印象 日の出」 

                                                               この絵のタイトルから印象派という呼称が生まれ、後にこの展覧会は「第一回印象派展」と呼ばれるようになるのですが、発表当時は、この絵の評判は散々だったそうです。批評家たちの目には、ぼんやりとした色彩で描かれたこの絵は従来の写実本位の絵から大きく外れていたからで、だから、人前に出すことさえ恥ずかしい失敗作だと決め付けていたようなのです。

  Photo                                                                                           

                              モネ                                                            

                                                                   それでも、モネはその後も「ぼんやりとした色彩の絵」を描き続けます。光はさまざまな色を見せてくれるからと、モネは自分の心象に写ったままの光景を描くことへのこだわりを決して捨てようとはしなかったのです。

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                               ルノアール              

                                                                  しばらく時間はかかりましたが、やがて美術界の主流は、光の表現を大切にした印象派を高く評価するようになっていきます。

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                                セザンヌ                                                                   

                                                                     ただし、印象派の誕生の影にチューブ入り絵の具の開発が絡んでいたことを知っている人は少ないでしょうね・・・。

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130 コメント

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印象派の原点はなんでしょうか? (NOいちご)
2010-10-04 01:14:33
印象派の原点はなんでしょうか?
フランスの絵画会での印象派と
呼ばれる絵画の手法や描かれる
テクニックなどの特徴を解説して
下さい。

芸術にまで話題が広がりましたね。
空間、暦、歴史、宇宙、芸能、
文学、芸術・・・。
京のほけん屋さんの知識の広さには、
本当に驚かされます。
凄過ぎ!
尊敬しています。

昨日のみどり虫様と学校の先生の
コメントに、大人の思いやりを感じました。
ネットの世界でこうした思いやりに触れら
れるのはこのサイトの大きな特徴ですね。
皆さん、京のほけん屋さんを慕われて
いるのでしょうね。
返信する
NOいちご 様 (京のほけん屋)
2010-10-04 01:45:08
NOいちご 様
コメントに感謝致します。


原点は、モネやルノワールという人たちが
展示会開いたとき、モネの「印象・日の出」
という作品に対し、新聞記者が
「印象的にへたくそだ」と、
馬鹿にしたのが言葉の由来です。


当時は、上流社会において自身の絵(肖像画)を
描かせたりと、社会的なステータスを絵画に
抱いていた時代なので、新聞記事の上でも
絵画は注目されているジャンルのひとつであり、
一般的に馴染まない技法の絵は、
色々と叩かれやすかったようです。

当時の古典的主流というのは写実的で、
またその絵に神秘性や宗教的観念とかを、
持たせた絵づらが格調高いものだ・・。と、していた
わけなのです。

そもそも印象派とか、こうした時代の絵画の派は、
その時々の絵画の傾向を分類するようなもので、
特に印象派は、そのテクニックや特徴というよりも、
時代の古典主流からはずれた作風であったとしか、
言えません。

大雑把には、主流のように出来上がっている
構図で写実的な図でなく、写真のスナップの
ように人物を写し、その情景を描き撮ったもの
でした。

また当時の主流とは違って、筆致の残った塗り方
であったり、見た目通りの色ではない、色彩に変化
を持たせた明るい色をつかったりという、当時の
フランスのカッチカチにまとまった古典主流の絵から
はずれた絵だったと言えます。


現代の様々な様式をもつ絵画の原点は、
この印象派だと明言出来るでしょう。

また、強いて原点というならば、印象派の言葉の
元であるモネが師事してた、師匠のシャルル
グレールが、

「好きなように書け・・・」

という方針だったようなので、そこが原点といえば
原点なのではないでしょうか。


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「印象派」が起こる流れを (駅スパート)
2010-10-04 20:10:21
「印象派」が起こる流れを
知りたいです。
美術の「印象派」はどういう経緯で
現れたのでしょうか?
当時の時代状況も含めて知りたいのですが--。
個人的には、印象派の絵が好きです。
ほんわかと、心優しくなる風合いが、
とても好きなんです。
精密画を(工業デザイン)を専攻
していた反動でしょうか。
返信する
Unknown (輪島市の輪島)
2010-10-04 20:31:06
今年もやられてしまいました。
「サツマイモ畑」は全滅です。
見事に全滅させてくれたのは
去年と同じくイノシシ。

去年の全滅事件に懲りて
猪除けの金属ネットを張って
いたのですが、ほんの少し弱い
箇所があって、直さなくちゃと
思っていた矢先にその場所を
突破され、見事に全滅させら
れました。
ああ、早く直しておけば・・・
後悔先に立たずでした。

今年も見事に一本残らず
食べられてしまったサツマイモですが、
サツマイモと並んで植えられていた
茄子には被害なし。
ハイテク兵器も顔負けの見事な
ピンポイント攻撃でした。

来年こそは、必ずイモを収穫して
みせるぞ!

返信する
印象派が栄えた時期に関する (奥たま)
2010-10-04 20:43:53
印象派が栄えた時期に関する
読み易い書籍というと、どういった
ものがあるでしょうか?
たまに美術館へ行くのですが、
先日、新国立美術館で催しを
観てきて、ちゃんと時代背景や
それぞれ個々人のバイオグラフィ
などを把握したいと思いました。
願わくば他の派も含めた時系列
的書籍もいいと思うのですが、
まずは印象派から・・・と思いました。
導入として良書がございましたら、
教えて下さい。
返信する
Unknown (aomori)
2010-10-04 21:23:18
印象を書くから印象派なのか
印象派についての説明で、
「見たままの自然を描こうとした」とか
「自然を忠実に再現した」などの
記述がある一方で、

「見たままでなく作者の印象を描いた」とか
「心に残った印象を表現した」などと
書かれたものがあります。

これって、全く反対のことを言って
いますよね。
ムムム・・印象派って何ですか。
返信する
Unknown (イケ・メンブス)
2010-10-04 22:27:10
ジョセフ・ヴァンサンは架空の人物?
(印象派にたいするルイ・ルロワの文章より)
ルイ・ルロワが「シャリヴァリ」で印象派の
展覧会を揶揄した文章のなかで、
画家ジョセフ・ヴァンサンは架空の人物
でしょうか?実際の人物?
返信する
駅スパート様 (京のほけん屋)
2010-10-04 23:05:40
駅スパート様
コメントに感謝致します。

1.色彩特に光のスペクトルの研究が進み、
それまで支配的だった配色を用いなくなった。

2.鉛のチューブによる絵の具の
 販売により戸外での制作が以前より
 容易に出来るようになった。

3.それまで工房による分業制だった
 制作過程が個人の制作にとどまる
 ようになり、より個人の意図を作品に
 込めやすくなった

4.写真機の登場により画家がより
 写実的に描く需要が減った。

5.アカデミズムの価値観の支配に
 反発する勢力の台頭

6.理想美から現実的な写実への
 移行の過程で発生

7.印象主義画家をセンセーショナル&
 スキャンダラスにとりあげたマスコミによる
 アジテーションによっての知名度の上昇

8.歴史的絵画からより身近な題材の作品の
 需要が増えた

9・今までの購買層ではない
 購買層(アメリカの成金)の
 価値観に合っていた。
 画商が目ざとくその購買層の開拓をした


(おまけ)
社会主義運動による啓蒙のおかげで、
それまでの支配的価値観や支配階級を
否定する下地が出来上がった。

ブルジョア的な価値観が反映しているものが
絵画や美術だったから(コレは私独自の予想
ですので根拠はありません)

返信する
輪島市の輪島様 (京のほけん屋)
2010-10-04 23:24:54
輪島市の輪島様
コメントに感謝致します。

イノシシにサツマイモを全部やられたとのこと。
以前、テレビでやっていたのですが、
ある農家が青色のLEDを畑の数箇所に
設置したら、まったくイノシシの被害に
あわなくなったと言っていました。

どうもこの色が苦手らしく、効果抜群だったとか。

試してみては・・いかがでしょうか。
返信する
奥たま 様 (京のほけん屋)
2010-10-05 00:13:05
奥たま 様
コメントに感謝致します。

まず、読み易いという点においては、
写真付きの雑誌かムック本に勝る
ものはないかと思います。

最新アート事情や目新しい解釈も随時掲載
されていますので、こまめにその都度手に
取られてみて下さい。

それとは別に、以下に何点かを
列挙します。



・『印象派はこうして世界を征服した』
 フィリップ・フック著 白水社
──印象派の当初の酷評は現代の
   それとは隔世の感が否めません。
   印象派のみならず美術界全体を
   把握する上でも相応に得られる
   ものがあると思われましたので、
   挙げさせていただきます。


・『近代絵画』小林秀雄 新潮社
──読み易さという観点からではなく、
   まず、好きな画家一人選び、
   その画家のバイオグラフィを通じて
   同時代の背景へ思いを馳せる
   手法もあるかと思われます。
   ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌ、
   ドガ、ピカソ、マネ、ルノアール、
   ミレー、コロー、あとはヴェラスケス、
   レンブラント、あるいは詩人の
   ボードレール等々、著者独自の
   偏愛ぶりに心惹かれ、何度でも
   読み返したくなる一冊です。
   また、ゴッホには格別の思い入れ
   があるようで、別途作品集11
   『ゴッホの手紙』も著しています。


・『新西洋美術史』西村書店
──同様の書籍『西洋美術史』(美術出版社)
   よりも解説的に優れている印象が
   あります。
   比較的コンパクトで持ち運びにも
   便利ですし、一冊、手元に置かれ
   ても良いかもしれません。


『岩波の世界の美術シリーズ 印象派』
もなかなかに秀逸です。
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