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トラップ

2016年12月04日 | うんちく・小ネタ



今年の4月、アルゼンチンで開催された「第15回世界最優秀ソムリエコンクール」の様子が、BSの番組で詳細に紹介されていました。
優勝は、ニューヨーク「チャーリー・バード」のヘッドソムリエを務めるスウェーデン代表ローゼングレン選手。
2位はフランス代表ビロー選手、3位はアイルランド代表デュプイ選手でした。日本人は森選手(コンラッド東京)が8位で石田選手(ホテル日航大阪)が13位。




審査の対象は接客技術とワインのテイスティングが基本で、出題されたワインの味と香りと色から「産地、ブドウ品種、生産年」を推測し、相性のいい料理を提案。
「ピノ・ノワール、ブルゴーニュ、2004年。これには鴨肉のローストがぴったりです」という感じで・・・。
厄介なのは、客に扮する審査員が出題するオーダーの随所に仕掛けられた巧妙なトラップ。




・オーダー1.
「超辛口(エクストラブリュット)のモエシャンドンを下さい」

・トラップ1. 
モエシャンドンに超辛口は存在しない。

・模範解答1.
最も糖度が低く超辛口に近い2006年のモエを勧める。ノンビンテージは糖度9なのですが2006年は糖度5という知識が求められるのです。もちろん、「超辛口ではないのですが」とのコメントを添えることも必要。

 


・オーダー2.
「おすすめのシャンパンを出してください」

・トラップ2. 
卓上のグラスに少量のシャンパンが残っている。

・模範解答2.
グラスを新品に差し替える。意外なことですが、テイスティングに集中するあまり、卓上のグラスに飲み残しのシャンパンがあることに気づかず、そのまま注いでしまう選手が多いのです。




・オーダー3.
「舌平目のムニエルに合うワインは赤白どちらですか」

・トラップ3. 
一般的には白ですが、主賓はどうしても赤が飲みたいという。

・模範解答3.
わかりました。ムニエルに柑橘を添えて赤に合わせましょう。単に客のわがままを受け入れるだけでは勧めた意味がなくなります。ひと手間かけて合わせる。赤ワインを冷やすという選択もいい。





これはもう、超難関としか言えません。
では、日本でも日本らしい素材を用いたソムリエコンクールを開いてみるのはどうでしょう。
例えば、「だしのソムリエ制度」をつくってコンクールを開催なんていかがでしょうか。

オーダーは「うるめ煮干しとかつお煮干しのだしで味噌汁」。
トラップは「かつお煮干しは存在しない」。
 

あぁ、トラップの妄想ばかりが膨らんでしまいそうです。