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単価に見合う価値の考察

2016年06月05日 | うんちく・小ネタ



食品の付加価値をグラム単価で評価するという考え方があります。
だし素材を例にとると、最も安価な顆粒だしの素はグラム0.5円ですが、本格的にだしを取る花かつおだとグラム5円。
この10倍の価格差が「だし感」の差なのです。
高級食材なら国産マツタケのグラム100円や、グラム800円のロシア産キャビア。
いやいや最高値時のウナギの稚魚はグラム2500円でした。グラム4300円の金に迫る高値だから、シラス漁師が血眼で海に入るのも無理はありません。




話は変わりますが、いろいろな娯楽を体感すると「一時(いっとき)」単価という考え方で総括をしたくなります。一時とは昔の時間単位で今の2時間。
その名残か、演劇やスポーツや音楽など多くの娯楽が2時間単位で提供されており、どうしてもその費用対効果を比較したくなるのです。
歌舞伎は一時18000円でちょっと高い。劇団新感線の時代劇だと大がかりだから一時13000円ですが、小規模の芝居だと一時7000円。
コンサートはどうか。ウィーンフィルなんて一時30000円でとても手が出ないが、N響なら8800円で何とかなりそう・・・。




スポーツも然り。大相撲の本場所は幕内力士が登場する午後4時からの一時を楽しむのが主流で枡席1人12000円。
東京ドームの巨人戦、一軍は6200円ですが、二軍だと3000円でネット裏最前列。
そうだ! ぴったり一時で終わるマラソンなら沿道観戦は0円ですね。



こういう風に比較すると、一時単価的に最も価値がある娯楽は間違いなく寄席だと気づきます。
前座が終わる6時半頃入って大トリが終わるまでの一時をたっぷり楽しみ2800円。もちろん漫才、曲芸、手品なんかの色物付き。
やっぱり寄席は庶民の娯楽なんですね。

「おい息子、となり行って金づち借りてきてくれ、釘打つんだ」
「すいませ~ん、金づち貸してくださぁい」
「どうせ釘打つんだろ、やだよ、すり減っちまうから貸さないよ」
「父ちゃん、となりのおじさん貸してくれなかったよ、ありゃ相当のケチだね」
「そうか、仕方ない。…ウチのを使うか」

一時単価を考えると、寄席ほど贅沢な娯楽は無いと思うのです。