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あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

家元制度みたいなソムリエ

2025年01月15日 | うんちく・小ネタ



今から10年ほど前、接待でレストラン「シェ・トモ」でフレンチを食べ、
野菜の味の奥深さに驚嘆したことがありました。

ほんとうに野菜がおいしかったのです。



山梨県境川村の有機野菜農家と契約している同店は、
自然の野菜が持つ旨味を最大限生かす味付けで有名店にのし上がり、
「おいしい野菜を食べるならシェ・トモ」と言われるようになったとか。

この話をJAの野菜部に勤務する知人に熱く語ったところ、
「野菜にはまったのなら野菜ソムリエの資格でも取ってみたら」と
野菜ソムリエの認定団体である「日本野菜ソムリエ協会」を紹介されました。
 
なんだかおもしろそう。



ところが、野菜ソムリエの資格を取るための認定講座がまあまあ高いのです。
初歩の野菜ソムリエが148,000円。中級の野菜ソムリエプロが320,500円。
最高位の野菜ソムリエ上級プロが、270,000円も取られてしまう。
初歩からの積み上げ式だから、最終的には約70万円以上かけて
資格を買うという感じですね。



それにしても、これだけの受講料を払って野菜ソムリエになったとして、
資格を生かせる仕事があるのでしょうか。
ワインならともかく、野菜のうんちくでメシを食うのは厳しいと思うのですが。
その日の接待では、ワインソムリエに助けられました。
ワイン通の客人を接待した時、ソムリエが客人のこだわりに耳を傾けながら
リクエストに応え、納得のワインを3本、事前に伝えておいた予算ぴったりに
出してくれたのです。



これは助かった。ソムリエの存在意義を痛感しました。
素人の知識では、何十万円かけても通人の意に添うビンテージを出すことなどできません。
将来、日本の食糧自給率がさらに低下し、ビンテージ野菜が登場するようになった時、
接待の席で野菜ソムリエが活躍しているかもしれないと思った次第です。


誰そ彼

2024年12月15日 | うんちく・小ネタ



とある繁華街にオープンした「隠れ家」を標榜する居酒屋が
まあまあはやっているというので、繁盛店調査を敢行しました。
入口か裏口かわからない地味な木戸をくぐり、トンネルのような
薄暗い廊下をくねくね歩いて予想以上に暗い個室に案内されました。



お決まりのアンティークフィニッシュ加工で、
新品の壁もテーブルも昔風に黒光っていました。
味は平均的でしたが、暗くて食材がよく見えませんでした。
肉の質をごまかすため、照明をわざと暗くした焼き肉屋があると聞きましたが、
確かに魚や野菜の鮮度がわかりません。少し不安になりましたた。



ふと、江戸時代の食事を想像。
昔のテレビ時代劇の食事シーンは夜でもかなり明るい部屋に設定されていましたが、
ハイビジョン放送が普及した今日では画質が鮮明になり、
リアルに暗い映像を流せるようになっています。

ただ、いわし油や菜種油を灯す江戸時代の行灯は60ワット電球の
100分の1程度の明るさしかなく、闇鍋状態ではなかったでしょうか。
だから、江戸人は朝も夕も明るいうちに食事をしたようですね。



明六ツ(日の出の約35分前)に起きて支度をし、明るくなって朝食。
明るいうちに夕食をすませ、暮六ツ(日没の約35分後)には就寝。
太陽と寝食を共にする自然児のごとき時間軸は、
お仕着せの「エコ」などかすんでしまう究極のサマータイム制です。



ならば件の隠れ家も照明を全て行灯に変え、「開店時間:暮六ツ、閉店時間:明六ツ」
としてはどうでしょうか。
昼間の長い夏期は営業時間が短くなってしまう欠点もありますが、
光熱費は抑えられるに違いありません。

そして、食材はもちろん、待ち合わせの相手の顔もよく見えない……。
見えない方が都合のいい時もたまにはありますが、
まずは相手を確認しなければ始まらないのです。

「誰そ彼(たそかれ)?」
たそがれ時の語源が体感できる居酒屋として、
けっこう繁盛するのではないかと思う年の瀬なのでした。


ツベルクリン反応陰性

2024年11月15日 | うんちく・小ネタ



花粉症に悩まされる人たちは、コロナ終息後もマスク生活継続となります。
年々増加の一途をたどるアレルギー疾患は、日本国民の約半数が罹患している現代病。
花粉症なんて昔はなかったのに…。



花粉症の増加は、体内から寄生虫がいなくなったからだとか、
衛生環境が改善されたからだなどとよく言われますが、
このような考え方を業界では「衛生仮説」というそうです。



そこで、この衛生仮説を研究する京都大学医学部白川先生の総説論文を紹介。

●1958年3月生まれの英国人17414人を調査→年上の兄弟がいると、
11~23歳時における花粉症および1歳までの湿疹の有症率が低い。

●イタリア空軍士官学校で17~24歳の学生を調査→A型肝炎ウイルスに感染した群では、
アレルギー性鼻炎の頻度が低い。
 
●和歌山県中部の中学1年生を調査→ツベルクリン反応陽性の学童は、
アレルギー性鼻炎や湿疹の有病率が低い。
 
●イギリスの学童を調査→2歳までに抗生物質を経口投与すると、
その後のアレルギー発症率が増加する。
 
●マウスの実験→寄生虫に感染したマウスは、非感染マウスに比べてアレルギー症状が軽い。

つまりは、大家族で不衛生で薬に頼らない田舎暮らしがいいということか。
事実、先進国でも途上国でも、農村地方に住む小児はアレルギーの有症率が低いという。



では最後に食生活。
これは、やはり食事の欧米化が原因。
典型的な欧米食にはリノール酸が多く含まれています。
リノール酸は、体内でアレルギー症状を引き起こすロイコトリエンや
トロンボキサンに変換してしまうのです。
そこで魚。
ご存じEPAやDHAは、抗アレルギー作用を持ちます。
ツベルクリン反応陰性の私は、せっせと魚を食べる毎日なのです。