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ハイドン 交響曲 第44番『悲しみ』/フィッシャー&オーストリア・ハンガリー・ハイドンPO

2010年01月11日 11時09分46秒 | ハイドン
 44番はホ短調です。この調性といえばかのブラームスの交響曲第4番やドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が思い出されたりしますが、wikiによればホ短調というのは『なまめかしさや悲しさを表す(シャルパンティエ)』、『非常に考え込み、深く沈み、悄然とし、悲しげな状態を作り出す(マッテゾン)』とあるように、直裁的な悲しさや悲愴味というより、もうすこし抑圧的なところでそれを表現するのに適した調性のようで、当時シュトゥルム・ウント・ドラング期のまっただ中だったハイドンは、第39番「the FIST」で採用した「疾走する悲しみ」であるト短調に続いて、もう少し内省的な調号であるこれを選んでみたというところでしょうか。

 ともあれ、日本人は短調好き、純文学好きですから、これまでほとんど明るく平明なアポロ的様式美の追求をしていた、これまでの交響曲群の中でも、前述の第39番の「the FIST」とあたりと並んで、その短調という個性故なんでしょうね。様式感に曲自体が埋もれず、「目立って聴こえる曲」と感じます。私などご多分に漏れず日本人的感性を発揮して、この曲には冒頭から他の曲とはひと味違う、ただならぬオーラのようなものを感じました。第1楽章はユニゾンで始まる主題からシリアスな雰囲気が漂っていて、エモーショナルというより、ストイックで厳しい雰囲気が印象的。一方、第2主題の方は対位法が印象的なスケールの大きなもので、曲の空間をぐっと広げています。展開部では第1主題をしずしずと扱いつつ、次第にテンションを劇的に高めていきます。第2楽章がメヌエットになっていて、通常とは2,3楽章のポジションが逆です。これもあまり文学的、構造的に深読みするほどのことではないと思いますが、重厚な第3楽章をハイライトにしたかったくらいのところではないでしょうか。ちなみにこの第2楽章はメヌエット部は第1楽章と同じホ短調で、舞曲にはまるで聴こえてこない、独特な静謐感がある曲調となっています。

 ついで第3楽章は、なんでもハイドンは自分の葬儀にはこの楽章を使って欲しい旨、遺言を残したとか残さなかったという曰く付きのものらしいですが、この楽章のホ長調といのは、この曲が作られた時代にはホ短調と並んで葬送曲用に使われることが多かったようです。今の耳にはこれが葬送用とはちと考えにくいですが、平明で透明感のあり格調高い楽章になっています。最終楽章はホ短調に戻って、やや物々しい雰囲気と緊迫感を漂わせつつ(まるでヨーロッパ映画のサントラのよう)、カノンなども交え、アレグロのテンポで一気呵成に進んでいきます。
 という訳でこの曲は気に入りました。ただ、日本人のワビサビの感覚からいうと、この曲『悲しみ』というニックネームより、もっと少し文学的なニックネームが欲しいところですね、だからといって適当なニックネームを提案できる訳でもないですが(笑)。

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