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新東宝名画傑作選 「大東亜戦争と国際裁判」

2009年12月23日 22時14分52秒 | MOVIE
 昭和34年制作、新東宝の十八番「戦争物」の一作である(第4作目とのこと)。ただし、本作品はタイトルからも分かる通り、いわゆる戦記物ではなく、戦後になって行われたも今でも何かと物議を醸し出す極東国際軍事裁判(東京裁判)がメインテーマとなっている。前半部分では、日本が第二次大戦に雪崩れ込むまでのプロセスが描かれ、中盤以降はもっぱら東京裁判の法廷がドラマのメインとなる構成となっている。なにしろ嵐寛寿郎主演であるし、通俗路線の新東宝の戦争物ということで、前に観た「明治天皇と日露大戦争」のようなガチで浪花節調のドラマかと思いきや、本作はいささか趣が異なっていた。

 なにしろ、昭和34年といえば、戦争が終わってまだ十数年という時期であり、「国民は軍に欺されていた」「東條は極悪人」みたいなイメージが、一般的だったと思うのだが、本作での東條英機は、以外のも実直で穏やかな指導者として描かれており、また東京裁判自体の意義について、疑義を申し立てる法廷場面が大幅にクローズアップされるなど、第二次大戦における日本をある種、肯定的に捉える視点で貫かれているのが、かなり異色といえる。ただ、まぁ、なにしろ90分の映画である。前半は第二次大戦をニュース風に振り返り、中盤以降の法廷を舞台としたドラマは実質1時間にも満たないから、いきおい駆け足にならざるを得ない。狂人となった大川周明や溥儀の出廷、ジョセフ・キーナンと清瀬一郎との緊迫やりとりなど、めぼしいところは押さえているが、パール判事の弁護は出てこないし、いささか食い足りない感は残る。また、とってつけたようなラストも時代を考えれば当然だろうが、せっかくこうした視点で作った以上、あえてあのような「民主主義万歳」的な〆はやはり蛇足であったような気する。

 ちなみに出演陣は東條英機を演ずる嵐寛寿郎以外は、ほとんど知らない地味な俳優たちばかりであったのは(ウルトラQの一ノ谷博士でお馴染み江川宇礼雄が弁護士役でちらりと登場)、逆にある種のリアリティを感じさせたかもしれない。という訳で、新東宝にしては、なかなかシリアスで硬派な、骨太なドラマあった(今、こんな視点で映画を作ったら各方面、その筋の国からの横やり抗議で凄いことになること請け合い-笑)。ちなみにこれは偶然だが、本日、12月23日はこの作品のラストにも描かれている東條らの死刑が執行された日である。もう61年も前の話である。

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