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ルイス・バカロフ/イル・ポスティーノ

2007年12月23日 13時02分18秒 | サウンドトラック
 「オーケストレーションはユニークだし、イタリア的なところとエキゾチックなところが妙に入り交じった旋律もおもしろいし、けっこう看過できない存在かなぁ....と思い始めました。とりあえずオスカーを受賞したという「イル・ポスティーノ」でも聴いてみようかな。」と書いたのが、このゴールデンウィーク前のことで、すぐにオークションで購入したはいいが、例によってけっこう時間が経ってしまいました。これはアルゼンチン出身、主にイタリア映画(それもB級作品ばかり)で活躍したルイス・バカロフが、なんと1995年にオスカーを受賞したという作品です。ナポリ沖合の小さな島を舞台にした、青年と詩人の友情を描いた作品らしく、映画のそのものいろいろなオスカーその他、いろいろな賞にノミネートされたりしていますがら、けっこう名作だったようですが、実際、受賞までこぎつけているのはなんといって音楽が多いですから、それだけこの音楽は高く評価されたんでしょう。

 音楽はなんといってもアルバム中、数回リピートされるメインテーマが印象的です。タンゴで使うバンドネオンの鄙びた音色が、壮麗に響き渡る弦と交錯して不思議な調和を見せています。私はこの映画を観ていないので、なんともいえませんが、なにしろ青い海と空が印象的な作品らしいので、こうした風景の元で展開されるドラマを音楽では弦とバンドネオンという構成で表現したんでしょう。なにしろ、冒頭でフェイドインするように入ってくる弦の既視感を誘うような響きと、そこにのっかるバンドネオンの懐かしい音色はそれだけで映像を喚起するような不思議な力があり、そこからイタリアらしい哀しくなるほどに美しい旋律がゆったりと展開していくあたり一聴して魅了されます。゜ちなみに4つヴァージョンですが、メインタイトルの他はピアノ+バンドネオン+ヴァイオリンで構成されたトリオ、バンドネオンのソロ、メインタイトルにチェンバロが加わった短いブリッジのようなもの、そしてたぶんエンドタイトルとなるアコスティック・ギターとバンドネオンのアンサンブルで演奏されたものとなりますが、どれも心が浄化されるような美しさがあり、アカデミー賞もかくやという感じでしょうか。

 その他、印象に残った曲をメモっておくと、2曲目の「自転車ののって」はおそらく主人公を現すテーマで、音楽的には重要なモチーフとして映画の中では何度かリピートされているようで、このディスクでは14曲目「郵便配達の詩」で再現されています。ユーモラスではあるがどこか哀しげなところはいかにもイタリアという感じ。ついでに5曲目「ベアトリーチェ」は、弦とバンドネオンにチェンバロが加わり、なんだか60年代にイタリア映画にタイムスリップしたような趣がある曲、主人公の漂泊する魂を表現したような6曲目「メタフォーレ」、あと4曲目「ポスティーノ・バンビーノ」ではヴィブラフォンを配し、10曲目の「郵便配達の夢」はパンフルートをともなったメイン・タイトルのリピートでとなっています。いや、何度聴いてもいいです、このテーマ。
 という訳で、久々にイタリアらしい映画音楽を聴いたという感じ、こういう伝統がイタリアにまだ残っていたというのはある種驚きでもありますが。ちなみにこの作品、大貫妙子さんあたりきっと大好きなんじゃないかな。

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