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仲正昌樹/ネット時代の反論術

2010年03月05日 23時42分24秒 | Books
 確かこれは一度読んだことがあるような気がするのだが、ヒマ潰しに駅で購入したものをこの2,3日読んでいる。「ネット時代の反論術」というタイトルからして、ブログだの掲示板だので、論争になった時にどう相手に反論するかみたいな内容を期待して購入してくる人も多いと思うのだが、実際に読むと確かにそういう部分もあったりはするのだが、意外とその前段に当たる部分に多くの筆を費やしている。いわく、ブログでやっているのは議論ではなくて単なる罵り合い、ネットでやっている論争など反論するに足るようなものはほとんどない、匿名で口汚く何か書き込んで来るやつに反論するなんて労力の無駄、そもそも議論をして何かひとつの真理へと導かれることなどほとんどない....といった具合である。つまり、「あなたが一生懸命になって、ネット内の誰かに勝とうとしていることは、本当に価値のあることですか」みたいなことが延々と書かれている。

 書かれていることはまったくその通りで、ふんふんうなずくことばかりである。私など最近はすっかり大人しくなってしまい、パソコン通信時代のように口泡飛ばして掲示板で議論することなど、今では全くなくなってしまったが、思い出してみるに、この手の議論というか、半ば罵り合いみたいなものは、なんであんなことで熱くなっていたのかと思い出すことばかりであった。某巨大掲示板群などでは、毎日のようにそうした罵り合いが展開しているが、その大半はおそらくどうでもいいような性質のものだろう。
 ネットの掲示板とかブログでは、例えそこにたまたま10人しか閲覧者がいなかったとしても、なんだか世界中の人に注目されている見たいに思えてしまう特殊環境なので、ああいう場所で否定的な意見が書かれたりすると、いきなり自分を全否定されたような気がしてしまい、ついこのまま引き下がれるか!みたいになってしまうのだろう。で、「オマエはオレの文章を良く読んでいない、オレは前にこれこれこう書いている、まずそれを良く読め」「いや、かつてアンタはあそこでこう書いている。これとそれでは云っていることが矛盾してるじゃないか」みたいな応酬に陥ると、もう泥沼は目前(笑)、あとは体のいい罵り合いになるだけである。この本ではこういう状況に対し、-繰り返しになるが-「あなたが一生懸命になって、ネット内の誰かに勝とうとしていることは、本当に価値のあることですか」といっている訳だ。

 もっとも、それだけではタイトル倒れになってしまうと思ったのか、具体的な反論術も最後の方にはいくつかは出てくる。例えばトラウマの移譲(スライド)なんて、おもしろい。「論の立て方が弱い」とか行ってくるような連中は、自分がかつてそういわれてトラウマになっているというからそこ突けという訳で、これはネットというより実際の対人関係に役立ちそうで大いに参考になった。あと「理性的なフリをして相手を苛立たせる」、「相手の行為の深刻な帰結を指摘する(こんなこと書くと××団体が黙ってないよ)」とかはネットに限らずこういう議論が上手い人はみんながやっている常套手段であるが、実際にこういう形で読むとけっこう目から鱗なところはあった。
 そんな訳で、この反論術の部分自体もなかなかおもしろいのだが、結局はそこまでパワーを費やして、相手に勝ったとしても、それが一体はどの程度のものか、「バカに対して反論するなんて、基本的にレベルの同じバカのやることだから、やめといた方がいいですよ」という結論を導いてくることになる。うーむ、確かにその通りではあるのだが、まぁ、「そう割り切れれば人間苦労しねーよ」みたいに思わないでもないが(笑)。

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