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伊福部昭/映画音楽全集3

2010年01月17日 12時02分06秒 | サウンドトラック
 このシリーズは伊福部先生が手がけた映画音楽から代表作を選りすぐり、作品毎に主要曲を小組曲風にまとめたアルバム10枚からなっている。先生の手がけた映画音楽は膨大なものがあるので、このアルバム10枚ですら、実のところ「抜粋盤」といった感はまぬがれないのだが(これの補遺のような形のシリーズもあり、それはそれで貴重だが、結果的に音源が分散してしまったのは残念なことである)、伊福部昭の映画音楽といえば、まずはゴジラ・シリーズという感がなきにしもあらずの状況が今も続いていることを考えれば、先生が作ったいわゆる一般映画からの音楽を多数含んだこのシリーズの存在は、実に貴重といわねばならない。今夜はその中から第三巻を聴いてみた。

 何故、唐突に第三巻なのかといえば、このアルバムには「暗黒街の顔役」が収録されているからだ。実は先日、日本映画専門チャンネルでオンエアされた同名作品を今し方観たところであり、実はオープニング・タイトルが流れるまで気がつかなかったのだが、冒頭のピアノのイントロが流れた瞬間、「あっ、そうか、これは先生がサントラ担当していたんだね」と思い、映画の内容もさることながら、一般映画での先生の音楽がどんな風だったのか、実は私はよく知らないので、検証するのにいい機会とばかりに、本来の目的である三船敏朗はどうでもよくなって(三船敏朗特集の一本としてオンエアされた)、もっぱら映画音楽に耳をそばだてることになってしまったのだった。

 観ていて、いや聴いていて感じのは、一般映画(今回の場合、和製フィルムノアールだが)では、先生はあまり劇中に音楽をつけていないということだ。冒頭から流れるピアノに導かれてオケが重厚に響くメインテーマが、劇中ではいくつかのヴァリエーションでもって流れるという感じで、特撮物のようにいろいろな音楽素材がつるべ打ち状態になっているものに慣れている私には、ストイックな風情すら感じさせるものだった。実は劇中にあふれかえる音楽というのは特撮映画ならでは事態で、一般映画はおおむねこのようなものだったのだろうとは思うし、先生ならではの見識もあるとは思うが(自動車修理工場での銃撃戦には全く音楽を付けていない)、それにしても「意外に目立たないな」という正直な印象だ。なお、度々繰り返されるテーマは、暗鬱で人生の悲劇を感じさせる重厚なもので、時にバンドネオンやアコスティック・ギターを交えて、場末に生きる人間達のドラマをマクロ的にクローズアップしている。ハイライトはやはり息子への土産を買って公園を歩く場面あたりだろうか。

 ちなみに映画自体はまずまずの仕上がりだ。東宝の映画で鶴田浩二というのは、「電送人間」でもそうだったけれど、後年のイメージからすると違和感を感じないでもないが、ただしこちらは心に傷を負った人間性溢れるヤクザという設定で、基本的にはその後の東映でのキャラと全く同じだから、まぁ、普通のフィルノアールとして楽しめたといったところだろうか。日活のそれと比べると、全体的に都会的で舞台も台詞もソフィスティケーションされているのは、やはり東宝ならではという感じである。

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