Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

海賊ブラッドとスクリーンの豪傑たち/various artists

2009年03月29日 17時55分42秒 | サウンドトラック
 ナクソスから出た映画音楽のコンピレーション、収録されているのはミクロス・ローザの「The King's Thief(55年)」、ヴィクター・ヤングの 「血闘(52年)」 コルンゴルトの「海賊ブラッド(35年)」、マックス・スタイナーの「三銃士(35年)」の4本。原題は「Captain Blood and other Swashbucklers」、Swashbucklersというのは「暴れん坊」みたいな意味らしいので、こんなタイトルに意訳してみたが、多分「スクリーン狭しと暴れまくるヒーローがする登場する映画」ばかりを集めたコンピレーションということなのだと思う。この手の映画音楽コンピレーションは日本にもあるが、アメリカではけっこう盛んなようで、私自身もハリウッド暗黒映画、エピック映画、シャーロック・ホームズ、エイリアン三部作、バック・トゥ・ザ・フューチャー三部作、歴代スーパーマン、しばらく前にレヴュウしたハマー・ホラーなどなどけっこう所有している。

 さて、収録曲だが、ミクロス・ローザの「The King's Thief」は7分半の小組曲で、冒頭から金管が咆哮するいかにも英雄冒険譚らしいムードで始まる(録音はナクソスなので、抉るようなシャープさはないが、まずまずのHiFi録音)。ローザは初期は「白い恐怖」あたりのニューロティック&メロディアス路線、後期は「ベンハー」に代表されるダイナミックなエピック映画路線という、ふたつのイメージがあるけれど、この作品はそのどちらにも属さない、妙に明るい快活なムードが珍しいかもしれない。組曲中2つ目のバロック調のセクションの伸びやかな開放感、3つ目に収録されたラブ・テーマ風の美しさなど印象に残った。

 2曲目の「血闘」はヴィクター・ヤング作曲だが、この人は映画音楽の大家の割にはサントラの復刻、あるいはスコア演奏などでも不遇気味なので、この作品はけっこう貴重かもしれない。私も映画内では彼の音楽をきっといろいろ聴いているはずだが、こうして聴くのとほぼ初めてである。この作品の音楽は、映画の性格上仕方ないかもしれないが、ほぼコルンゴルトの後塵を拝した、典型的なハリウッド・スタイルである。元々クラシックのヴァイオリニストだったというから、ストリングスを全面に出したやや甘目の音楽なのが特徴になっていると思う。きっと恋愛映画などでは本領が発揮したのだろうと思う。

 コルンゴルトの「海賊ブラッド」は、彼のハリウッドのデビュー作である。前述の「決闘」のほとんど始祖ともいえる作品だと思う。ここでは計6曲、約20分の組曲が収録されているが、この作品の全曲版はサントラでもスコア盤でもみたことが、とりあえずこれだけ収録されていれば、ほぼおいしいところは楽しめるのではないか。
 メイン・タイトルは説明を要しないといってもいい、金管が咆哮する典型的なコルンゴルト節だ。2曲目のハイライト部分はリヒャルト・シュトラウス直系のオーケストレーションでもって、ウィーン風な甘さが出た、これまたコルンゴルトらしい夢見るように美しい音楽になっている。3曲目は瀟洒なウィンナ・ワルツ風な小品。4曲目は「ヘリアーネの奇跡」を思い出せる幻想的な音楽。ラストの2曲は眩いばかりのオーケストレーションでつくられたダイナミックな活劇音楽である。

 最後の「三銃士」はマックス・スタイナー。この人はなんといっても、「風と共に去りぬ」の音楽が有名だから、いかにもハリウッド通俗映画の大家といったイメージだが、コルンゴルトほど破格ではないとしても、この人も名付け親はリヒャルト・シュトラウス、ブラームスに薫陶を受け、15歳で入ったウィーン国立音楽大学ではマーラーから教えを受けながら、約1年でその修了したというから、ウィーンではかなりのアカデミックな神童だったことは間違いない。
 この音楽は1935年に作曲されたようだし、コルンゴルトの影響はほとんどなかったのだろう、これまでの3曲と比べられると、メロディックで旋律主体のたおやかさがあり、オーケストレーションもある意味地味というか、オーソドックスさにあふれている。2曲目の「愛のテーマ」あたりはスタイナーらしさ全開の旋律だが、こうして聴いてみると、スタイナーの少しばかり翳りのある甘さってのも、実はウィーン的なものだったことがよくわかる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ティエリー・ラング・クイン... | トップ | ブラームス ピアノ四重奏曲 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サウンドトラック」カテゴリの最新記事