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新東宝名画傑作選 「憲兵と幽霊」

2009年09月26日 23時58分56秒 | MOVIE
 「憲兵とバラバラ死美人」の翌年つまり58年の作品。新東宝にいわゆる「憲兵物」が何本存在するのか、私にはさっぱり分からないのだが、けっこうまとも推理映画だった「バラバラ死美人」に比べると、こちらはかなりタイトルから受けるイメージ通りの作品である。なにしろ主演の天知茂分する憲兵が悪い(笑)。同僚(中山昭二)の奥さんに横恋慕して、その同僚を巧妙にスパイの罪を着せ、銃殺に追い込むだけでその悪党振りは鬼のごとしだが、更に親切ごかしで、同僚の母親を自殺に追い込む、未亡人(久保菜穂子)を犯して孕ませす、そもそも発端の書類紛失にかかる黒幕スパイが実は自分だったりするはで、今のぬるま湯の浸かりきったかのような日本人の感覚からすると、ドン引くくらいの極悪非道振りある。しかも、それをいかにも冷徹で血も涙もなさそうな天知茂が演じているのだからおもしろい。

 いささか陰湿だがピカレスク・ロマン的な趣で引っ張る前半に対し、舞台が中国に移る後半から終盤にかけてはお約束の怪談調が次第に濃厚になる。死んでいった者の怨念が次第に主人公を追い詰めていき、スパイであることがばれた主人公は銃撃戦の果てに、墓場に逃げ込むシーンでは、棺の蓋がはずれて幽霊はでる、逃げまといすがりつく十字架にもことごとく幽霊がいる、海に沈められたとおぼしきは軍曹の棺から水が溢れ出したりする部分とかは全く怪談映画で、このあたりはメガホンをとった中川信夫らしいセンスといえるところだろうが、怨念の主体が実に温厚で誠実そうなキャラの中山昭二だったり、舞台が洋風の墓地だったりするせいか、実はあまり怖くないのが残念なのだが....(もっともこのシーン、その後中川と天知が組んで作ることになる大傑作「東海道四谷怪談」の前哨戦と見ると別の趣があるかもしれないが)。

 という訳で、陰湿な憲兵物+怪談風味ということでなかなかおもしろい作品だった。出演者としては、いいところを全て天知茂が持っていってしまっているが、個人的には後半のキャバレーシーンでセクシーな踊りを披露する万里昌代の美しさが印象に残った(脇毛も凄いが-笑)。現代でいえば常盤貴子みたいな、ややキリっとして、ツルっとした感じが、ホント今にも通用するような美しさなんだよね。ついでに書くと、この映画戦中日本と中国を舞台にしているのだが、当時を街並みとか風俗などをみると、昭和30年代とさしてかわらないのにちょっと目から鱗の感もあった。歴史はやはり連続しているのであり、やはり自分など、なんだかんだいったところで、戦前暗黒史観が染みついていることを認識した次第。

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