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ラスト・エンペラー(B.ベルトリッチ 監督作品)

2009年12月26日 01時22分20秒 | MOVIE
  「ラストエンペラー」をほぼ20年ぶりくらいだろうに観た。先ほどNHKのBSHiでオンエアされたもので、ヴァージョンは劇場公開のそれではなく、全長220分に及ぶディレクターズ・カット版であった。なにしろ夜9時から始まり、終わったのは日が明けて、もう1時近かったから、その長さも分かろうものである(もっともベルトルッチでは「1900年」という320分にも及ぶ作品があったが)。今回はこれを観る予習(?)として、新書とはいえ「溥儀」の評伝も読んでいたこともあり、予備知識はばっちり、溥儀の前を通り過ぎる何人もの端役の歴史的ポジション、動きようなものが、今回はより明快に分かったし、「あぁ、この部分は映画的には○でも、歴史的には「嘘」だなと」とか興ざめしつつ、ベルトルッチにとって、溥儀が歴史的にどういう人物に写ったのか、よく分かっておもしろかったといったところだ。

 それにしても、前半~中盤で描かれる「紫禁城のたそがれ」の映像美は圧巻である。記憶によれば、もう少し壮大なスケールだったような気もしたのだが、その圧倒的な色彩感、秀逸なカメラワークなどは、今観ても思わず息をのむほどだ。よくわからないが、劇場公開版に追加されたシーンはほとんど紫禁城に舞台にした部分ではないか....そう思わせるくらいに、この紫禁城でのシーンは入念かつじっくりと描かれていて、まさに美術の国イタリアの映画監督が作った作品だなと思わせるシーンの連続であった(ついでにいえば乳母との関係や別れなどは、いかにもイタリア映画的情緒であったと思う)。また、最初はアシッドな雰囲気すら漂う紫禁城の内外が、様々な歴史的出来事によって否応なく、変貌していく様を映像はよく伝えていて、ジョンストンの登場、眼鏡、外から聞こえてくる怒号などを経て、紫禁城のどまんなかで溥儀たちがテニスをやっているところに、城の立ち退き命令が下されるあたりのシーンなど、あれやこれや説明せずともそういう歴史の荒波を感じさせる部分だった(この後の黒の衣装に、サングラスみたいな眼鏡をかけて、城を後にする溥儀は絵的にもカッコ良かったな)。

 ただ、まぁ、じっくりと観ていると、このディレクターズカット版、全体にちと冗長かなというところはないでもない。映像的に優れた場面をあれもこれも入れすぎたせいで、物語的にはテンポが落ちているような気がしないでもない。もうほとんど記憶にないが、劇場公開版では、最後までもうすこし締まったテンションが持続していたような気がするのだが....。などと、あれこれ考えながら観ていると、あのラストシーンがやってくる。くどくど説明しないけれど、映画の冒頭、溥儀が城内の誰かにコオロギ(キリギリス?)を貰うシーンに呼応したもので、これによって、スクリーンで起きた様々なドラマが想起され、その直後、畳み掛けるように現代の紫禁城の観光ガイドの画面に繋がるあたり、ドラマ的な起承転結という意味でも、申し分ない優れたシーンで、「いったい歴史に翻弄された溥儀という人物はなんだったのか」と、あれは観るたびに感動してしまう。という訳で、この「ラストエンペラー」、やはり名作であった。こうなると「1900年」ももう一度観てみたい気がしてきたが、そういえばこの作品の後、ベルトルッチはみたび歴史的大作を作ったのだろうか?。

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