ワルター・クリーンのブラームスは30年くらい前だったろうか、当時、ワーナーパイオニアから大量に復刻されたものを良く聴いたものだ。あまりよく覚えていないのだが、これらのアルバムはジャケ裏に演奏技法のようなものかなり詳細に解説したライナー・ノーツがついていて、かなりマニアックな体裁だったのが心をくすぐられたものだったし、1500円くらいの廉価盤というのも大きな魅力だった。まぁ、あの時期にブラームスのピアノ曲が体系的、かつ気軽に聴けるアルバムなど他になかったという事情もあるにはあるのだが…。このアルバムはそんなVOX時代のブラームスをCD5枚に集めたものである(ちなみに全集ではない、LP時代には収録されていたので、ここに入ってない曲もけっこうある)。
ワルター・クリーンは50年代中盤あたりから、グルダ、バドゥラ=スコダ、ブレンデル、デムスらと並んで、ウィーンの有望株だったはずで(「ウィーン三羽鳥」はグルダ、バドゥラ=スコダ、そしてクリーンだったような)、ご多分にもれず、彼も理知的なスタイルをベースにリリカルなタッチと身上としていたようだ。なので、モーツァルトあたりならその特性も発揮されるだろうが、重厚なブラームスでは音が軽すぎて、ちとそぐわない気が-当時はブラームスなどほんの聴きかじりだつた私してから-したものだった。なにしろ、他にアルバムと聴き比べることが、そう簡単ではなかった時代なので、聴いているうちに無理矢理自分の方が演奏慣れてしまったみたいなところがないでもなかった。今ではいい思い出である。
さて、クリーンの演奏だが、全体に柔らかく丸みを帯びて、ちょっとくすんだような響きがとてもウィーン風だと思う。老境のブラームスに去来したでろあろう複雑な感情といった文学性、あるいはデモーニッシュな振幅といったものを排したアポロ的な演奏というべきかもしれない。もっといえば、その軽味を帯びた音色やベタベタせずにスムースに進行していくところなど、サロン風な美しさと心地よさすらあるといってもいいくらいだ。なので、「3つの間奏曲」などもあまり深刻にならず、むしろ時折見せるほのかな幸福感のようなものをクローズアップした演奏という感じがする(もちろん、単に明るいだけという訳で、細かいニュアンスにも富んでいるので、この曲の機微のようなものが不足している訳ではない)。また「6つの小品」もほのかに明るく、また伸びやかな曲が多い作品集ゆえ、4曲の中では一番クリーンに向いている演奏かもしれない。
また、「7つの幻想曲」の1,3,7曲のカリプッチョなどに代表される、それなりに重厚でシリアスなパートでも、スタイリッシュかつシャープに弾いている感じで、胃もたれしない演奏という感じだし、様々な音楽要素が錯綜するせいで、一番「とりとめがない」感じがする「4つ小品」でも、クリーンは各曲の個性を際だたせるというよりは、4曲をなだらかに均質化しているというか、曲毎の差異を上手に埋めていった演奏という感じもしたりする。
あと、既にマスターが劣化してしまっているのか、、「4つ小品」などでは強音でざらつくノイズがやけ多いのが残念だ。こういう繊細な演奏では否応なく目立ってしまうので、ある意味致命的なところもある。
ワルター・クリーンは50年代中盤あたりから、グルダ、バドゥラ=スコダ、ブレンデル、デムスらと並んで、ウィーンの有望株だったはずで(「ウィーン三羽鳥」はグルダ、バドゥラ=スコダ、そしてクリーンだったような)、ご多分にもれず、彼も理知的なスタイルをベースにリリカルなタッチと身上としていたようだ。なので、モーツァルトあたりならその特性も発揮されるだろうが、重厚なブラームスでは音が軽すぎて、ちとそぐわない気が-当時はブラームスなどほんの聴きかじりだつた私してから-したものだった。なにしろ、他にアルバムと聴き比べることが、そう簡単ではなかった時代なので、聴いているうちに無理矢理自分の方が演奏慣れてしまったみたいなところがないでもなかった。今ではいい思い出である。
さて、クリーンの演奏だが、全体に柔らかく丸みを帯びて、ちょっとくすんだような響きがとてもウィーン風だと思う。老境のブラームスに去来したでろあろう複雑な感情といった文学性、あるいはデモーニッシュな振幅といったものを排したアポロ的な演奏というべきかもしれない。もっといえば、その軽味を帯びた音色やベタベタせずにスムースに進行していくところなど、サロン風な美しさと心地よさすらあるといってもいいくらいだ。なので、「3つの間奏曲」などもあまり深刻にならず、むしろ時折見せるほのかな幸福感のようなものをクローズアップした演奏という感じがする(もちろん、単に明るいだけという訳で、細かいニュアンスにも富んでいるので、この曲の機微のようなものが不足している訳ではない)。また「6つの小品」もほのかに明るく、また伸びやかな曲が多い作品集ゆえ、4曲の中では一番クリーンに向いている演奏かもしれない。
また、「7つの幻想曲」の1,3,7曲のカリプッチョなどに代表される、それなりに重厚でシリアスなパートでも、スタイリッシュかつシャープに弾いている感じで、胃もたれしない演奏という感じだし、様々な音楽要素が錯綜するせいで、一番「とりとめがない」感じがする「4つ小品」でも、クリーンは各曲の個性を際だたせるというよりは、4曲をなだらかに均質化しているというか、曲毎の差異を上手に埋めていった演奏という感じもしたりする。
あと、既にマスターが劣化してしまっているのか、、「4つ小品」などでは強音でざらつくノイズがやけ多いのが残念だ。こういう繊細な演奏では否応なく目立ってしまうので、ある意味致命的なところもある。
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