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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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ベニスに死す(L.ヴィスコンティ監督作品)

2007年02月19日 00時43分24秒 | MOVIE
 ノイマンのマーラー5番のレヴュウで、ちょいと話題が出てきたので、さきほど(21時くらいですが)日曜洋画劇場よろしく(笑)、「ベニスに死す」をDVDで観てみました。いやぁ、やはり良いです。この映画は私が観た映画でも五本、いや三本の指に入る作品ですね。お話は簡単、真に美しいものは、自然界にではなく人間の健全な芸術活動によって生まれると信じてきた作曲家が、静養に訪れたベニスで世にも世にも美しい少年と巡りあってしまい、これまで信じてきた芸術観をこなごなに打ち砕かれたあげく、折しもベニスを襲っていたコレラにかかって死ぬ....というものです。原作はトーマス・マン、主人公が小説家からマーラーを想定したとおぼしき作曲家に変わっている点を除けば原作に極めて忠実なのですが、やはり、この世紀末としかいいようがない退廃的な物語をほとんど完璧に映像化しているのに圧倒されます。

 特に1911年代当時のグランドテル・デ・バンで、バカンスを楽しむ中~上流階級の人々の風景はさながら絵画のようでもあり、とくに前半は、もう花、花、花、エレガントなドレス、ドレス、ドレス、ついでに帽子、帽子、帽子という感じで(笑)、もうそれを観ているだけでもため息が出ました。娼婦の役がはまり役のシルバーナ・マンガーノがここではなんとも気高い貴婦人になっているところも、ヴィスコンティ・マジックを感じさせますし、回想のシーンしか出てきませんが、主人公の奥さん役のマリサ・ベレンスンなんかももうやたらとキレイでした。蛇足になりますが、ホテルの中でBGMとして小さな楽団がレハールの「メリーウィドウ」を演奏しているシーンがありますが、ここなどレハールの音楽が当時どう「生きて」いたのかを、とてもリアルに感じとれたりして、映像による資料としてもなかなかのものかなと思いました。

 ついでにビヨルン・アンドレセンのまさに究極の美少年ぶりも圧巻で、こんなのに出会ったら、そらその気のないオジさんだって心のひとつやふたつ揺らぐわなぁ....と素直に思いますね。そうそう、この映画というと何かにつけ同性愛がキーワードとしてついてまわりますけど、なんかそういう文章を読む度、違うんじゃないの....と思うんですよね。この作品、要するにヘーゲルとかカントみたいな、理詰めで芸術とか美とか追究していった男が、その果てに迎える壮絶な敗北感みたいなところが切ない訳で、どうもそのあたりを「ジイさんが美少年に恋した」みたいな矮小な観念に収めようとすると、単に深刻さが空転するグロテスクな作品にしか見えなくなっちゃうんじゃないかと思うんだけど、どうでしょうかね?。

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3 コメント

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ああ~やっと、同じ考えに。 (アダージョ)
2007-02-21 02:11:31
初めまして。
『違うんじゃないの』に大共感,「そうそう本当にそうなのよ
!!」と涙が出る程{大袈裟じゃあ無く}嬉しくてついコメン
トを書かせて頂く気に。
私にとって『ベニスに~』は1番です。若い時は勿論タッジオ
の妖しさを秘めた美しさに、年を重ねて来るとグスタフに共感。
セリフより表情で語っているダークの演技、そしてマーラーの曲。繰り返し見れば見るほど益々好きになって、もう30回?
は、此れからも見続けます。私にとって癒しの最高の時間
なんです。トーマス・マンも、ルキノ・ビスコンティも、クラシック入門もこの映画からでした。有難う御座いました。


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re:ああ~やっと、同じ考えに。 (BlogOut)
2007-02-22 09:33:02
アダージョさん、コメントありがとうございます
>セリフより表情で語っているダークの演技
本文には書きませんでしたけど、グーク・ボガードいいですねぃ。大詰め近くタジオを追いかけて薄暗い街角に紛れ込んで、水飲み場のところにくずれるように座って、斜め上を見上げつつ見せる泣き笑いなんぞ、絶望と後悔と恐れを抱きつつ、得も言われぬ幸福感を感じてしまっているという、主人公の世紀末としかいいようがない状況を何もなんのセリフもなく表現しきっているのはさすがでした。まさに一世一代の名演ですね。
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1番好きな所 (アダージョ)
2007-02-22 23:15:58
最後の場面、波の輝きと音楽、後を追おうと手を伸ばして。
好きな所はキリが無いほど有るのですが、私も1番好きな所が、あの泣き笑いの場面なんです。
ウオーキングに「5番を聞きながら」何んて人には言えません
が、何処に行くのも5番と一緒です。
PS。 マーラーもマンもルキノも亡くなられて、ビョルンは52歳、「ベニス~」以後の人生は、誤解のなかで言葉では云えない辛い日々だったと。
映画の中の『エリーゼのために」は、ビョルンがルキノに頼まれて即興で弾いた物を其の儘使われたそうです。
4月にドイツでマーラー全曲演奏が有るそうですね。NHKに是非放送お願いメールをしたのですが?せめて録画でもと。
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