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ブラームス 「6つの小品」 聴き比べ

2010年05月03日 16時15分59秒 | ブラームス
 このGWまっただ中、今日の午後は昨日の「3つの間奏曲」に続いて、「6つの小品」をあれこれ聴いてみた。この曲はブラームス晩年の「孤独だが自由だ」的心情の、割と陽の部分を出して始まり、中間部では若い頃の激情やロマンスを回想しつつ、最後には諦念の淵へと沈み込んでいくという感じで進んでいくもので、ある種のストーリーを頭に描きながら聴くことも出来ると思う。そういう曲である。

・W.ケンプ
 前記の物語性を表でって感じさせず、実にさっぱりとして、その枯れ具合は、ちとオーバーにいうと解脱した境地みたいな趣きがある(そういえば録音もけっこう無愛想だ)。やっぱり、なんでもかんでも口に出してしまい、大きな声で解説してしまうのは、「粋じゃないでしょ」とでもいっているようだ。それにしてもニュアンス豊かな演奏で、こういう演奏でこの曲に馴染んでしまうと、他の演奏は聴けなくなってしまいそうな気がする。

・P.レーゼル
 この演奏も文学性あまりなく、まるでベートーベンを演奏するかの如く、重厚で隙がなく完成した音楽として扱っているみたいな印象。その安定感はいかにもドイツ的でいかにも充実響きが心地よい。「何も足さない、何も引かない」的スタンダードな演奏というべきだろう。聴けば聴くほどに味が出てきそうな演奏で、かなり気に入ってきた。

・W.クリーン
 レーゼルの後に聴くと、この人はやはり低音が軽い感じてしまう。VOX特有(?)なAM放送みたいな録音のせいもあるだろうが、「ロマンス」みたいな曲だとズシンとくるものがない。一方、間奏曲のような穏やかな曲になると、他と曲と同様、ブラームス晩年の「孤独だが自由だ」的心境を、実に安らかな気分で楽しむことができる。ちなみにここ数字にベッド脇にあるCDコンポで、寝る前はいつも彼の演奏ばかりを聴いている。

・G.オピッツ
 レーゼルを多少鋭角的にして、メリハリをつけたような演奏で、動的な曲ではかなり華麗な部分も過不足なく表現し、この曲の幻想味や文学性も不足しないという、万事破綻がない演奏という感じだが、どうもこの人のピアノはたまにキンキン響くところがあって、気になる時がないでもない。聞き比べてみるといろいろと気になることも分かってくるものだ。

・H.アウストベ
 アウストベは北欧出身でメシアンなどを得意としているようだが、この人はブラームスが書いた対位法のような部分に着目しているのか、普段は目立たない部分が、ふいと浮き上がって聴こえてきたりする。また録音の良さもあって、この曲を実に多彩なテキスチュアで表現していて、かなりモダンなブラームスという感じがする。

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