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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ザ・グレイト・ジャズ・トリオ/ス・ワンダフル(SACD)

2005年03月28日 21時00分00秒 | JAZZ-Piano Trio
 ドラムとベースがこれまでのエルヴィン・ジョーンズ&リチャード・デイビスから、ジャック・ディジョネット&ジョン・パティトゥッチとスウィッチした新作です。ムードも大分かわりました。このトリオは初代の頃から、なんていうか世代間異種格闘技的なおもしろさみたいなものを売りにしてきたところがありますが、前作までのメンツには、予想したほどそうしたおもしろさなかったように思います。企画としては良かったかもしれませんが、なにせエルヴィン・ジョーンズに元気がなかったというか、トミフラの「セブン・シーズ」みたいな仕上がりを期待したオレがバカだったというか(笑)。

 しかし、今回のアルバムはある意味で初代トリオに匹敵するくらい、前述の世代間異種格闘技的なスリルが復活してます。とにかくディジョネットのドラムがパワフルなのがいいです。ご存じの通りディジョネットのドラムは、スタンダードなジャズ・ドラムとはひと味もふた味も違う、独特なリズムの句読点とダイナミックさがありますけど、それがまるでまっとうなジャズらしさの権化みたいなハンク・ジョーンズと共演することで、期せずして両者の特質が鮮明に浮かび上がってきているという感じです。しかも、ベースがそうした両者の落差を、ごくごく当たり前のものとして受け入れるジョン・パティトゥッチというヴァーサタイルな新世代ときてますから、音楽的なバランスにも破綻がありません。

 曲としては、1曲目「スワンダフル」でいきなりディジョネットがかましてます。初代トリオの「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」冒頭を飾った「ムース・ザ・ムーチ」を思わせるパワフルさがあって、「一瞬、おぉ」とか唸っちゃう(笑)。ジャック・ディジョネット&ジョン・パティトゥッチのコンビといえば、昔、ゴンザロ・ルバルカバのアルバムでもやってた記憶ありますけど、あの時のどうってことのないご両人のプレイに比べると雲泥の差。相手がハンク・ジョーンズだとこうなるか!って感じですかね。あとハンクが主導した「酒とバラの日々」「恋人よ我に帰れ」の三位一体でスウィングする快調さもいいです。たた、「モーニン」とか「テイク・ファイブ」あたりまで登場するのは、なんだか日本製舶来ジャズの悪しき陥穽を感じないでもないですけど....(笑)。

 そんな訳で、SACDという新しいフォーマットに合わせて復活したGJTですが、これを含めた4枚の中では一番の出来じゃないかと思います。それぞれの曲の演奏が短い、前述の選曲面等やや気になる点もないではないですが、とりあえずは78点ってところかな。


 PS:録音はいかにも日本発って感じの、このレーベルに共通する上品な絹ごしサウンド。物理特性はかなり良さそうですし、バランスもほとんどパーフェクトな感じですが、もうちょっとジャズ的なアザとさのようなものがあっても良かったですかね。
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楊乃文(フェイス・ヤン)/Silence

2005年03月28日 00時01分01秒 | 台湾のあれこれ
 先日の訪台した際に購入した作品。台湾ポップスといえば、アメリカンAORと日本的なニューミュージック&アイドル歌謡あたりをベースに、情緒豊かなメロディーと大陸的な感覚がごっちゃになった音楽というイメージが強いが(バラード王国などとも云われるし)、この作品はそうした台湾ポップス作品でもかなり異色な作品という感じがする。

 なにせシュワシュワ・ノイズ+テクノ・リズムの冒頭、懐かしブリティッシュ・ゴシックを思わせるギター・サウンド、暗鬱なアシッド風味と、まずは「ウッソー」って感じで度肝抜かれる、楊乃文のヴォーカルも、ウェットな台湾スタイルというよりは、どっちかというとこれまた懐かしいエレクトライブ101みたいな、いかにも80年代的な低カロリー・スタイルで、バックのサウンド共々聴いていて、ほとんど台湾って感じがしないのが逆に新鮮。
 更に詳しく書けば、2、4、7曲目は今度はサンディーズか初期のEBTGみたいなアコースティック・サウンド、3,5、8曲目はさながらオール・アバウト・イブかテキサスっぽいドライブするギター・サウンド、6、10曲目はアシッド・テクノ、9曲目はアンビエント・ハウス....とここまで書いてくれば、このアルバムの音楽、わかる人にはわかるでしょう。

 いや、もちろん、やれ台湾だ、日本だ、英国だ、とかいって紋切り型に音楽を定義する必要はないし、そもそも私は台湾の音楽をそんなに網羅的に聴いているワケでもないけれど、やはりこういう音楽が台湾に出てきたというのは、画期的なことではないかと思う。なにしろ、これまで私が聴いてきた台湾ポップスには、ブリティッシュ・ロック指向なんぞ、薬にしたくとも見あたらないなかったから、まるで「ここ10年間のブリティッシュ・ロックを台湾からレトロスペクティブした」みたいなこのアルバム、やはり衝撃的というか、新鮮という他はない。
 
 ということで、台湾ポップスの新しい波を感じさせる1枚。ちなみに本国でも大ヒットしたそうだ。(2000年12月24日)


※ このアルバムがきっかけということはないとは思いますが、これを書いたミレニアムあたりを境に台湾ポップスも大きく変わったようです。2000年に台北に行った時、東京でいったら青山ともいえる西門町界隈では、ハウスっぽいリズムが溢れかえっていて、けっこう驚きました。その時、タワーレコードで思わずジャケ買いして(笑)、帰国して聴いてみたところ大当たりだったのが、このアルバムという訳です。
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