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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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ベートーヴェン交響曲全集/ヨッフム&BPO,BRSO

2005年03月26日 20時53分30秒 | クラシック(一般)
 ここ数年、クラシックは新録ソースが激減した反面、再発、復刻の類が沢山出るようになっていると思います。特に××全集といったボックス・セットは、1枚あたりの単価が何百円単位という、ほとんど劇的な安さなので、たまに石丸なんか行くと、あまり聴くあてもないのに、単に物欲だけで何セットも買い込んできてしまいますが、これもそんな動機で購入してきた箱です。

 ヨッフムは晩年、ブルックナーを中心した伝統的なドイツ指揮者として非常に高い評価を得ていたような記憶があります。ただし、出来不出来が激しいとかで、ブルックナー以外の50~60年代のソースはあまり出回ってなかったようで、グラムフォンでベートーベン全集まで吹き込んでいたとは意外でした。おそらくモノラルからステレオへの移行期に録音されたため、モノとステレオが混在した音質的問題や、同レーベルでこの直後から開始された、カラヤン&BPOによるステレオ録音の全集が出たため、忘れられてしまったのではないかと思うのですが、なかなかどうして良い演奏でした。

 ヨッフムの指揮は、フルトヴェングラーのような文学性、カラヤンの機能美、ワルターの歌心といった、いにしえの巨匠がもっていたような濃厚な個性は感じられませんが、多分、オーケストラの自発性みたいなものを重視しているんでしょう、とにかくドイツ的重厚さに裏打ちされたスタンダードなベートーベンらしさを楽しませてくれるという点で、妙なひっかかりを感じることもなく、安心して聴けるのがいいです。
 また、これが録音された当時のベルリン・フィルとバイエルン放送響は、今のオーケストラではちょっと聴くことができない、ある意味野暮ったいほどに無骨で重厚な響きを持っていて、これがまたいかにもベートーベンに合っていて魅力的です。

 なお、この全集の録音は52年から61年に渡りますが、リマスタリングの効果もあるのか、音質的にはおしなべて良好で、一番古い52年の9番も音質的なデメリットはほとんど感じませんでした。そんな訳で、私はあまりベートーベンそのものがあまり得意なクチではないのですが、これのおかげで久しぶりにベートーベンを楽しく聴けました。

※ ヨッフムといえば、50年代中盤にモノラル録音したワーグナー管弦楽曲集は、個人的には大名盤なのですが、フィリップスさん早いとこCD化願います。
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MILES DAVIS / Miles Smiles

2005年03月26日 17時44分14秒 | JAZZ
01. Orbits (Shorter)
 オーソドックスさアブストラクトさが入り交じったシグナル風なテーマにこの時期の「マイルスの変質」を感じさせる。ソロの方もこの時期らしいスピーディーな4ビート・パターンではあるものの、ショーターソロなど彼らしい「変な感じ」がかなり出てきているのが目新しい。そんな訳で、従来の圧倒的な推進力でぐいぐい進む流れが確実に変容してきたことを感じさせる1曲。

02. Circle (Davis)
 やや陰鬱なムードをもったもスローワルツ。ミュートで演奏されるテーマは従来のバラード演奏とさほど遠くないセンスであるし("Goodbye"を思わせたりもする)、ショーターもその線。ただし、バックを彩るハンコックのピアノだけは確実に新しい響き美しさをもっている。ソロについてもほぼハンコックの印象派的なたたずまいが、他のソロを圧倒しているといってもよかろう。

03. Footprints(Shorter)
 トニーとロンがライブで見せる変幻自在のリズム・チェンジをスコアリングで再構成したようなリズム実験のような曲だ。ご両人は付かず離れずといった風情で様々なリズムの変化を演じてみせるが、ロンのベースが12小節のリズムをキープしていて、1~10小節はほぼリフ、に11~12小節目でパターンを様々に変えるという構成で全体を通しているのがミソ。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順だが、それらのリズムとはほぼ無関係にソロをとっているようでもありちょっと複音楽的にも感じられる。つまり非常に知的なアレンジなのだ。
 
04. Dolores (Shorter)
 アップ・テンポで進む王道4ピート作品で、ソロの順番もいつもどおりだし、過渡期を迎えていた彼らとしては、古典的なたたずまいといえる。テーマに回帰するプロセスと唐突なコーダのアレンジが、いささか凝っている点を除けば、ライプでお馴染みないつものペースで押しきっているというところだろう。

05. Freedom Jazz Dance
 8ピートをベースにした作品。前作での"Eighty-One"に比べると、こちらの方がいくらかストレートに8ピート的なおもしろさを出しているともいえるが、全体としはまだまだ4ピートにきこえる部分もあって中途半端な感はぬぐえない。ただし、シグナル風にモチーフを繰り出してくるマイルス・ソロはかなり斬新だし、ショーターやハンコックもその線で実験的なフレーズを繰り出しているのは、その後の彼らの展開する音楽を思えば興味深い点ではある。

06. Gingerbread Boy
 1,4と同傾向の王道4ピート作品。トニーに暴れ方といい、ソロのホットさといい、ダイナミックさという点ではアルバム随一かもしれない。人様の曲を素材にして軽く一曲仕上げたというところなのだろが、ハンコックのソロでベースが一瞬、弛緩した動きになるあたりの呼吸は名人集団の凄さを見せつける。(2000年7月9日)


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