(童話)万華響の日々

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三浦綾子作品ー4 「果て遠き丘」 その印象

2012-02-21 21:12:15 | 読書三浦綾子作品

読書「果て遠き丘」三浦綾子 1977年発行 集英社 
 全体的に少女マンガ的な内容の物語という気がした。つまり虐められる少女と虐める側の少女がいて、ついに虐める側の少女には罰が当たり、虐められていた側の少女は優しい理解のある若者と結ばれるという結末の物語である。

 ふとした浮気を実母から咎められ離婚した橋宮容一は、その別れた妻 保子と十年後に再びよりを戻そうとする。それに伴い二人がそれぞれ連れて育てた自分たちの子供である恵理子と香也子という姉妹もまた再会することになる。

  その恵理子や父親である容一の再婚相手の扶代の子である章子は結婚適齢期で、それぞれ好きな男とつきあうが、そういった浮いた話に縁のない妹の香也子は二人の姉たちの恋の邪魔をする。


  章子の付き合った男、金井はいわゆる結婚詐欺風な男で、父親の容一から金を引き出すのが真の狙いというとんでもない人間であった。章子は香也子の邪魔にあった結果、詐欺男と別れるがその失恋と騙されたショックで一時的な記憶喪失に陥る。だが、恵理子も章子も結果的には自分にあった男と結ばれる。

 
  問題は、他人の失敗や不幸をみて喜ぶのが生き甲斐である香也子の生き方である。彼女は自分の姉、章子をだました詐欺男、金井に接近し結婚しそうになるが、結局彼女も自分が遊ばれ、男の狙いは父の金をくすねるだけが狙いであって、ついには捨てられたことに気づく。香也子は他人を平気でだましたり、裏切ったり、嘘をついたりする。

  それで相手が困っているのをみて快感を抱く。そのために自分自身が、本当に他人の助けを求めたときには、誰も彼女を信用せず放置され、奈落に突き落とされるという結末が待っていた。他人を不幸にするためなら平気で嘘をつき裏切るという邪悪な性格には勝っていたが、他人を愛したり、尽くしたりする能力には基本的に欠如していた。

  この小説が前編とすれば、後編を読みたい気がする。香也子がその後どうなったのか、
この主人公である香也子は何となく、グリム童話のシンデレラ姫にでてくる意地悪な姉妹に似ている。
 
 
三浦綾子55歳の時の作品であり、そこには明確なる神の臨在や神への信仰は示されていない。三浦綾子がこの結末で満足するはずはないと思ったのである。
  
それで、想像ではあるが三浦綾子は香也子の改心をテーマにした続編を考えていたのではないだろうかと思うのである。