透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

絶滅危惧屋根

2009-09-20 | A あれこれ


 大町市の郊外にある木崎湖、その湖畔の集落に一軒だけ残っている茅葺屋根の民家。以前からこの屋根が気になっていた。先日国道から脇道に入って、路上観察した。

寄棟の大きな屋根、この写真ではよく分からないが、棟端は2重棟になっている。棟の中央は煙出し棟。棟が鋼板葺きになってしまっているのは残念。だが、もはや絶滅危惧屋根構法となってしまった茅葺、貴重だ。周囲の民家のように鋼板で包んでしまわずにこのままの姿を維持し続けて欲しい。



この写真は30年位前に大町市の隣村、白馬で撮ったもの。この頃はまだ棟も健全、樹皮を押縁で押え、棟木を押え合掌で留めた棟覆いを見ることができた。

原さんの「繰り返しの美学」

2009-09-20 | B 繰り返しの美学







■ 「飯田市美術博物館」

原広司さんが「繰り返しの美学」するとこうなる。入道雲、形の違う構成要素の繰り返し。

館内、列柱。珍しく同じ形の柱の繰り返し。色の違う石を角柱の出隅に貼ってもよかったのに。鋼材で構成されたトラス。繰り返しているような、いないような・・・。

複雑な形の屋根は南アルプスをモチーフにしたとか。ちなみに京都駅の大階段は伊那谷、原さんの原風景。


「廃墟建築士」を読んだ。

2009-09-20 | A 読書日記

「いつも文頭につけているの色に何か意味があるのですか?」と訊かれた。色には意味を持たせてはいない。なんとなく決めている。こう訊かれて、そうか、例えば内容によって色を変えるとか、なにかルールを決めておいてもよかったかな、と思った。



女優・石田ゆり子の『天然日和』幻冬舎文庫。

料理がとても好き、雑貨類が好き、スターバックス大好き。猫4匹、犬1匹と暮らしている・・・。

日々の生活のささやかな出来事を飾らず、気取らず綴っている。彼女の人柄が文章から窺える。



三崎亜記の『廃墟建築士』集英社。

先日 友人から借りた本。この本をリクエストした訳ではない。読書家の友人おすすめの1冊。

**七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野生がある。蔵に意識がある。**と、帯でこの本に収録されている4編を紹介している。どれもシュール!

「七階闘争」 ビルの七階で事件が連続して起こったことが市議会でも取り上げられて、市長は**(前略)すべての七階を撤去する方向で検討いたしたく、全力を尽くす所存で、あります。**と答弁。それに対して七階護持闘争が起こる。七階に住む主人公はこの闘争に参加するのだが・・・。

ビルの七階を撤去する、六階の上が八階になるってどういうこと? 小説の中では一応説明されてはいるが、どうもその状況をうまくイメージすることができない。でも気にしない、気にしない。なかなか面白い状況設定で、一気に読んだ。

「廃墟建築士」 数年前、蝶のような名前の建築士が構造計算書を偽装した。あの事件からヒントを得たのではと思わせる小説。偽装することなくきちんと廃墟を設計、施工するって、この小説もなかなかシュール。

**今回の検査対象は、築十五年の「廃墟移行物件」だ。今回の移行検査で造反所見が無ければ、正式な廃墟として認定されることになる。**

「図書館」 図書館の本が館内を飛ぶ! 動物園の鳥たちのように。

**閲覧者に見られながら飛ぶことは多大な疲労を伴うため、夜間開館は一日おきに週三日までと制限されていた。**

「本の夜間飛行」を見せるというイベント、好評で期間を延長することになるが・・・。

Mさん、ありがとう。面白かったです。 


飯田の三連蔵

2009-09-19 | A あれこれ
■ 飯田といえば「リンゴ並木」。1947(昭和22)年の大火の後、当時の飯田市立飯田東中学校の生徒たちの提案によって生まれたそうですが、今では町を特徴付けるシンボルとして、すっかり有名になっています。

このリンゴ並木の両側にレンガ調のブロックが敷き詰められた歩行者優先道路が整備されています。この道路に沿ってオシャレなカフェやレストランが軒を連ねています(写真)。



この道路から路上観察した蔵、案内板によると1840(天保11)年に建設されたそうです。三つの蔵に分棟してあるのは、リスク分散のため。万が一火災に遭っても全焼は免れますから。

総二階建の蔵、なまこ壁が二階にまで及んでいます。扉付きの窓、窓周りの太い縁取りが印象的です。このように古い建築があると街並みに落ち着きが感じられ魅力が増します。「歴史の重層性」ってやはり都市の魅力には欠かせない要素なんですね。

白いのれんのお店「豆吉本舗」で買い求めた甘納豆は上品な甘さ、美味でした。



「ジョゼと虎と魚たち」

2009-09-16 | A 読書日記
■ 田辺聖子というベテラン作家の作品ははじめてかもしれない。小川洋子の『心と響き合う読書案内』PHP新書に取り上げられている『ジョゼと虎と魚たち』を読んだ。

短編を8編収録している。主人公は30代の女性が多いが、彼女たちの振る舞いや会話がどうも歳相応に思えず、馴染めなかった。ただ、表題作で主人公のジョゼと男友達の恒夫の「コト」に至るまでの会話はアリかもしれない。いちばん面白く読んだのは短編小説のような山田詠美の解説だった。



次は、女優・石田ゆり子のエッセイ集『天然日和』幻冬舎文庫。ストライクゾーンど真ん中な好みの石田ゆり子。「釣りバカ日誌」のOL役、寂しげな表情がなかなかよかった。

いったいどんなエッセイを書くんだろう・・・。今週、隙間時間に読むつもり。


いつものように

2009-09-13 | A あれこれ



 休日。いつものように午後のひと時をカフェ・シュトラッセで過ごす。曲名はサン・サーンスの「白鳥」くらいしか分からないが聴いたことのあるヴァイオリンの調べが店内に静かに流れている。

まずいつものように朝日新聞を読む。連載が始まった川上弘美さんの「七夜物語」、確か以前「週刊ブックレビュー」で川上さんは小学生の女の子を主人公にした小説を書きたいと語っていた。この連載小説は小学4年生の女の子 さよちゃんが主人公の物語。さよちゃんは図書館が大好き。図書館で見つけた好きな本のタイトルが「七夜物語」、先日読んだ紹介文にはそう書かれていた。

新聞をざっと読んだ後、いつものように持参した本を読む。『流れる星は生きている』中公文庫 **子供たちは、私を真剣な眼で見上げている。「いまに何か貰ってくれるにちがいない」と、信じて待っている眼であった。その眼にはげまされるように、私は激しい屈辱と闘いながら、また押してみた。しかし何の反応もかえっては来なかった。

「お母さん、きっとどこかでおにぎりを貰って上げるからね」急にそう言いながら涙がこみ上げてきた。これほどまでにして、私は生きなければならないのだろうか。**こんな場面を読むと涙ぐんでしまう・・・。

本から離れて店内を見て思う。このインテリアにはこの椅子とテーブルがピッタリだな、と。

同じテーブルがポン、ポン、ポンと並んでいる。この様子をみて、何故か過去から現在へと続く時の流れを想起した。そして先日テレビで見た伊勢神宮の式年遷宮のことを思い出した。20年ごとに社殿を造り替えて神体を移す例の行事。神宝もすべて新調するのだそうだ。武器や服飾品などの神宝のなかにはもう新調することが困難になってしまったものもあると番組では紹介していた。それは朱鷺の羽を使うものだったが、もう朱鷺がいない・・・。

7世紀末から延々と続く行事。そして思った、そうか式年遷宮
も「繰り返しの美学」だと。

再び『流れる星は生きている』に戻る。**二人の子供は、「寒い、寒い」といっていて、大豆を食べる元気さえなかった。私は背中の咲子を下して、乳をふくませたが一滴の乳も出て来なかった。**

続きは夜自室で読もう。溢れる涙を気にしないですむ。


 


デザインのトータリティ

2009-09-12 | A あれこれ






■ 先日デザインのトータリティについて書きました。トータリティ(totality)、辞書には全体性、完全性と出ていますが、本稿では一貫性がピッタリです。一貫性という意味の英単語があるのでしょうが知りません・・・。

浴衣を着て靴を履いたら、誰でもおかしいと思いますよね。浴衣なら履物はやはり下駄でないと。空間デザインにも同様のことが言えると思うのですが、ちぐはぐな空間デザインをときどき見かけます。そう、浴衣なのに靴を履いたようなデザインを。そんなときは「アチャー、この空間にこの家具はないよな」などと思ってしまうのです。

そう、やはりデザインはトータリティが大切なんです。今回アップしたふたつのカフェのショップカードと内観写真(内観写真のアップはオーナーの了解を得ていますが、カードについては了解を得ていません。オーナーさんご容赦願います)。

手描きのイラストを使ったのカードは手づくり感溢れるの空間のお店のもので、ナール体の文字でデザインされたのカードはの空間のものであることは直ぐに分かりますよね。どちらも色使いまで共通していませんか。逆の組み合わせだと思う人はまずいないでしょう。

デザインに対するオーナーの考え方や好みがはっきりしているとこのように一貫性が出るんですね。どちらのお店も置かれている椅子やテーブルのデザインも空間の雰囲気にピッタリ。

心地良い空間でつい長居をしたくなる、その理由はデサインのトータリティにある、そう思っています。


民家 昔の記録

2009-09-12 | A あれこれ


■ 奈良県の当麻町に出かけたのは1981年5月の連休のこと。近鉄南大阪線沿線で見かけた大和棟の民家(と当時の記録にはある)の写真を何枚かファイルしてある。これはそのうちの1枚。

立派な鬼瓦と懸魚。鬼瓦には亀が、懸魚には鶴、縁起のいいデザインが施されている。

ところで、建築文化の多くは大陸から日本に伝わってきたのだが、懸魚(げぎょ)のルーツもやはり中国にあるらしい。雲南省には魚の形をした飾りを屋根に吊るす風習が今でも残っているとのことだ。

懸という字に魚、即ち魚を吊るすという名前も頷ける。懸魚にもいろいろな形があるが、当然その意味からして魚の形のものもある。手元にその写真がないのは残念。

注意して観察していればいつかどこかで見つけることができるかも知れない。旅行したら、なるべく注意深く路上観察しなくては・・・。

路上観察 読書発電所

2009-09-11 | A あれこれ



 路上観察 今回は読書(よみかき)発電所。南木曽町にあるこの発電所は1994年に国の重要文化財に指定された。

福沢諭吉の婿養子の福沢桃介は関西電力の前身となる大同電力を設立、木曽川沿いに七つの発電所を造った。当時、木曽川開発には相当反対もあったそうだが、反対運動を先導したのが島崎藤村の実兄・島崎広助だった。一方、桃介を支えたのが、マダム貞奴。ふたりの愛の巣がこの発電所の近くにあって、今は「福沢桃介記念館」として保存されている。

この発電所の外観の特徴はなんといってもアールデコ調の窓。半円形と四角形の窓の繰り返しが正面から側面にまで続いている。大正の雰囲気が漂う繰り返しの美学なデザイン。

参考文献『日本の近代遺産』日経プレミアシリーズ


 


「流れる星は生きている」を読む

2009-09-08 | A 読書日記



■ 『心と響き合う読書案内』小川洋子/PHP新書に紹介されている本を何冊か読んでみようと思う。未読本も何冊かある。

藤原ていの『流れる星は生きている』は単行本で既読のはず。書棚を捜したところ『家族』は見つかったが、『流れる星は生きている』は見つからなかった。

この作品は中公文庫に収録されていることが分かっていたので、本日購入。終戦の年、幼い子供たちを連れて満州から郷里に引き上げてきた著者。その苦難に満ちた日々の記録。改めてじっくり読みたいと思う。


路上観察 松本市内の道祖神

2009-09-07 | B 石神・石仏


 松本平は道祖神の宝庫、あちこちに道祖神が祀られています。今回は松本市内田の道祖神です。祠と共に彫り込まれた道祖神。今朝、偶然見かけました。

5月3日にお祭をしているそうです。しめ縄はその時に取り付けたもの。花が飾ってあります。ほのぼのとした光景ですね。近所の人たちが道祖神を大切にしていることが分かります。


「サブウェイ123 激突」を観た。

2009-09-06 | E 週末には映画を観よう

 この週末、代休を取って3連休。今日の昼、映画「サブウェイ123 激突」を観た。

ニューヨークの地下鉄を乗っ取って、市長に1,000万ドル要求した4人組の悪たち。そのオヤブンというかリーダーを演じたのがジョン・トラボルタ。

ジョン・トラボルタといえば「サタデー・ナイト・フィーバー」。当時スリムでかっこ良かったオニイサンも今や、太めの中年オジサン。あの映画から30年以上経っていれば当然か・・・。

地下鉄の運行指令室でたまたま指令を担当していた職員がトラボルタとの交渉役に。この地下鉄職員 ガーバーを演じたのがキャリアの長い俳優 デンゼル・ワシントン。

ふたりの中年オジサンは無線を通じて交渉、頭脳戦。そう、この映画は中年オジサンふたりが主人公。地上では身代金1,000万ドルを運ぶ現金輸送車やパトカー、バイクが猛スピードで街中を走り回ってクラッシュしたりと、この手の映画お決まりのシーン。

直接犯人に現金を渡す役目まで指名されてしまったガーバー。ヘリコプターで現場に向かう直前に奥さんと電話で会話。そこで帰りに牛乳を買ってきてと奥さんに頼まれる。この辺が、やはりアメリカ映画。よくパニック映画でも死に直面してジョークを言うシーンが登場する、あれだ。

ガーバーは何とか乗っ取られた地下鉄車両に現金を届ける。現金の入ったカバンを受け取った犯人たちはあっと思わせるルートで地上に出て逃走。

トラボルタはタクシーで逃走。それを追うワシントン。地下鉄職員は車の運転が超ウマイ。警察に任せればいいのに、とも思うが、まあ、そこが映画。

ラスト、事件の解決をみて、市長に感謝されて、地下鉄で家に帰るワシントン。奥さんに頼まれた牛乳が入った袋をぶらさげて満足そうな表情、このラストが上手い!

ところで、映画には何らかのメッセージが込められているもの。大切なのは家族の愛だとか、お互い信じあうことが大事なんだとか、言葉にすればなんだか陳腐だけど。で、この映画に込められたメッセージって一体・・・。

評価はちょっと甘めの★★★★☆、80点。


 


ファッション

2009-09-05 | A あれこれ
 先日、若い女性がこの頃よくしているレギンスと胸元にキャミソールを見せるファッションについて書いた。インナーのアウター化、本来下着だったレギンスやキャミソールを見せるようになったのは、実は神様の作戦ではないかというアルコールな夜の仮説。でも翌日読んでみてなんとなく気になって削除してしまった。性欲などという言葉が出てくるなんて、

でも、再び書く。



環境ホルモンの影響がヒトにも及んでいて、オスの精子が減少してるそうだ。上のどちらの本だったか、フランスやイギリスの調査結果が紹介されていた。当然性欲も減退しているだろう、と中年オジサンは考える。その結果が「草食系男子」ではないのか。

草食系男子とは恋愛やセックスに縁がないわけではないのに積極的ではない、「肉」欲に淡々とした男子のこと、と検索した解説文にある。男の性欲が減退しているとすれば種の保存に関わる大問題。本の赤い帯のように**人類はもう子孫を残せない!?**と心配になってくる。

そこで神様が採った作戦というのが、女性のファッションを過激にというか刺激的にすることだった。

求愛行動でディスプレイをする鳥、ヒトも同じだ。刺激的なディスプレイをしないと・・・。テレビに出てくるタレントもアナウンサーも、街を歩く女性も「見せキャミ」ファッション。

あれが刺激的なディスプレイかどうかは意見が分かれるかもしれない。別に刺激的でもなんでもないじゃん、という意見ももちろんあるだろう。

中年オジサンとしてはどうも馴染めないのだが、神様の作戦ならしかたがない。成り行きに注目しよう・・・。

一度嵌まると、逃げられない作家です。

2009-09-05 | A 読書日記



 『心と響き合う読書案内』小川洋子/PHP新書。

先日この本を紹介していただきました。で、早速購入。まえがきによると現在も放送中のラジオ番組で紹介した本をほぼ一年分をまとめたものだそうです。

目次を見ると、川上弘美の芥川賞受賞作『蛇を踏む』が取り上げられています。あの独特の世界を小川さんはどのように紹介しているのだろう・・・。

**普通は、「私」と「あなた」、「私」と「蛇」は、それぞれの輪郭によって隔てられています。おのおのが自分の輪郭の内側にとどまることで、自分なりの秩序に守られています。ところが川上さんの小説では、輪郭も細胞膜も全部が溶け出し、みんなが一つの沼の中で絡み合っているような世界があらわれてきます。川上さんは、言葉でこういう世界がつくれるということを示してくれたのです。** 

「あわあわ」「ふわふわ」「ゆるゆる」などという曖昧な表現でしか説明できない私などとは違って、小川さんはこのように明快に川上さんの小説世界の魅力を紹介しています。小川さんの代表作で映画化もされた『博士の愛した数式』新潮文庫の解説で数学者の藤原正彦さんは小川さんの印象を清楚な大学院生のような人だったと書いていますが、まさに真面目で優秀な大学院生が書くような紹介文です。小川さんは川上さんを**一度嵌まると、逃げられない作家です。**と評しています。そうです、もう私は逃げ出すことが出来ません。

これから、カフェ・シュトラッセにこの本持参で出かけます。