透明タペストリー

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「源氏物語の教え」を読む

2023-12-08 | A 読書日記

 大塚ひかりさんは中学生の時から「源氏物語」に親しんでいたそうだ。「源氏物語」の個人全訳(ちくま文庫)も手掛けているし、源氏関連本も何冊か出している。先日『やばい源氏物語』(ポプラ新書2023年)を読んだばかりだが、今度は『源氏物語の教え』(ちくまプリマ―新書2018年)を読んだ。

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大塚さんの頭には「源氏物語」の見取り図がきっちり入っているに違いない。ズームイン、ズームアウト、『源氏物語の教え』は見取り図に自在にアクセスして書かれているから。

紫式部は結婚後数年でシングルマザーになってしまったが、人並み外れた学才で、漢文の素養があったために道長の娘・彰子の家庭教師に起用された。で、大塚さんはもし紫式部があなたの家庭教師だったらという設定で本書を書いている。家庭教師の紫式部は読者のあなたにどのような助言をしているか・・・。

**女子が壁にぶつかった折に生きる指針となり得ることばの数々が詰まっているという意味でも「実用的」なのだ。**(12頁)の女性ではなく女子ということばと各章の扉のセーラー服姿の女子生徒が描かれたイラストから分かるけれど、大塚さんが「源氏物語」から紫式部のメッセージを読み解き、伝える相手は女子中高生たち。だが、別におじさんが読んじゃいけないというわけではない。

1000年前も今も変わらぬ人生訓

『源氏物語』の最後、浮舟が登場する「宇治十帖」については文体がそれまでの帖とは異なる印象を受けること、和歌の数が少ないことなどから作者が違うのではないか、という見解が昔からあるそうだが(過去ログ)、紫式部がより強くメッセージを発するために今まで以上に気合を入れて書いた、という気がする。大塚さんも「宇治十帖」を取り上げた本書『源氏物語の教え』の最後に力を入れていることを読んでいてなんとなく感じた。

大塚さんは宇治川に身を投げたものの、助かってからの浮舟の生き方から次のような重要なメッセージを引き出している。それは自分を大切に、自分の人生を生きよ というメッセージ。「源氏物語」から受け取る紫式部のメッセージは人それぞれだろうが、確かにこのメッセージは1000年前も今も変わらぬ人生訓だ。


 



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