透明タペストリー

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「グッドバイ」を読む

2024-01-07 | A 読書日記

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■ 朝カフェ読書(01.05)で『グッドバイ』朝井まかて(朝日文庫2022年)を読んだ。大浦 慶という実在した女性商人の波乱の生涯。時代は江戸末期から明治初期。

長崎で菜種油を商う大浦屋の女主・大浦希以(けい、後に慶)は菜種油の商いが下降線を辿り始めると茶葉の輸出に活路を見出し、財を成す。しかし・・・。長崎の釜炒り茶とは製法の異なる駿河の蒸し茶の需要が伸びていき、商いの場は長崎から横浜に移っていく。

時代は明治に変わって数年後、慶は煙草葉の商いに関わる手の込んだ詐欺にあい、巨額の負債を抱え込むことになる。ここからが「負けてたまるか!  大作戦」。読んでいて感動の涙。

物語には次のような件も。

慶は幕末の志士とも知り合い、資金援助もしている。佐賀藩士・大熊八太郎(重信)と慶の会話。
**「お慶どの、再会できてよかった。よう生き延びられた」
「何の、これからまた、生きるか死ぬかのビジネスば始めます」
「さような豪儀を申すから、あらぬ噂を立てられる」
「噂とは、私のですか」
「そうだ。幕末に茶葉交易で莫大に稼いで、その金子を長崎に集まった志士らに注ぎ込んだ、倒幕にも一役買った女志士らしいぞ」
(中略)
「私には政についての志なんぞ、なかったですばい」
彼らの熱が眩しくて、傍にいるだけで面白かった。それだけだ。
「まだあるぞ。大浦屋の座敷に志士らを匿うはいいが、毎夜、亀山社中の若者に湯殿で背中を流させたそうな」
「己の背中は己で洗います」
「わしは一度くらい、流させてもらいたかったがのう。しかし言下に振られ申した」
以下略。**(382頁)

坂本龍馬とも懇意になった慶は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』にも出てくるとのことだが覚えていない。この小説とはだいぶ印象の違う女性として描かれているようだ。確かめようにも文庫本は既に手元にない。

人生いろいろ。葛飾北斎の娘・お栄さんもすごい人生を送ったけれど、お慶さんもすごかった。あの時代に、こんなにすごい女性がいたのか・・・。


さて、次は何を読む? 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
朝井まかて (tami)
2024-01-10 21:44:46
今年もよろしくお願いします。

まかてさんの本をよく読まれてますね。
私も大好きな作家さんです。

「白光」を機会があれば読んでみて下さい。
読み応えがあります。
tamiさんへ (U1)
2024-01-12 21:51:00
コメントありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。
朝井まかてさんもtamiさんに教えていただきました。
「白光」読んでみようと思います。

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