透明タペストリー

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「桃太郎は盗人なのか?」

2020-01-23 | A 読書日記

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 『桃太郎は盗人なのか? ―「桃太郎」から考える鬼の正体―』倉持よつば(新日本出版社2019)を読んだ。これはよつばさんが小学5年生のときに「図書館を使った調べる学習コンクール」で文部科学大臣賞を受賞した作品を書籍化したもの。

**桃太郎が、鬼が島に行ったのは、鬼の宝を取りに行くためだったということです。(中略)宝の持ち主は鬼です。鬼の物である宝を、意味も無く取りに行くとは、桃太郎は、盗人(ぬすっと)ともいえる悪者です。**(14頁) 福沢諭吉がこのように「桃太郎が盗人だ」と非難していることを知り、桃太郎を正義の味方だと思っていたよつばさんは、びっくり(私もびっくり)。

よつばさんは**桃太郎がどうして盗人だと言われているのか、そして、どうして鬼はいつも悪いと一方的に決めつけられているのかを調べてみたくなりました。**(7頁)と研究の動機を書いている。

それからがすごい。図書館の司書に桃太郎本探しのサポート受けて、桃太郎の読み比べをする。よつばさんはあくなき探求心から平成から大正・明治・江戸の本まで、なんと200冊以上の本を読む。

よつばさんは江戸時代の桃太郎は桃からではなく、おばあさんから生まれたことを知り(桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返って、おばあさんが妊娠、桃太郎を出産したという回春型)、桃太郎が桃から生まれるのは明治以降ということを知る(果生型)。また、桃太郎が鬼が島へ行くのは、悪い鬼を退治するため、と理由付けがされたのは明治の後半(27年ころ)からで、それ以前は、鬼の宝を取りに行くためとなっていることを知る。それで福沢諭吉の「桃太郎盗人論」に納得する(私も納得)。文献調査の成果だ。

更によつばさんは鬼の正体に迫っていく。このプロセスが分かりやすく書かれていて興味深い。

この本にまとめられているのは研究論文と呼ぶにふさわしい論考だと思う。

すばらしい!


 



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