透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「ダンゴムシに心はあるのか」

2011-07-30 | A 読書日記



 『ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学』 森山徹/PHPサイエンス・ワールド新書

■ ユニークで簡単ないくつかの実験によって、ダンゴムシに「心」があることを実証しようとする興味深い試み。実験の前提となる心の定義だが、本書の記述によると「未知の状況において、予想外の活動を自発的に発現させる隠れた活動部位」ということになる。  

「部位」という言葉の意味というか定義がよく分からない。部位というと、例えばヒトでいうなら脳のある特定の領域をさすのだろうか・・・? 「隠れた」って、まだ見つかっていない部位(領域)という意味なのだろうか? それとも部位にものとしての実体が無いので見ることができないという意味なのだろうか? 仮にそうならそもそも部位という言葉は相応しくないように、私は思う。 

自然科学では、いや何も自然科学に限ったことではないが、用語の定義がきちんとなされていないと、言い換えれば概念規定が明確にされていないと記述内容の理解が難しい。この本の第一章「心とは何か」はよく理解できなかった。これは私の理解力不足によるのだろう・・・。生物学者の福岡伸一さんは朝日新聞紙上の書評欄で本書を取り上げて「心とは何かずばりと定義する」、「斬新な定義に胸騒ぎを覚えた」と書いていることだし。

第二章「ダンゴムシの実験」では比較的簡単な実験装置を使ったいくつかの実験が紹介されている。この章はなかなか興味深い内容だ。

多重T字迷路装置(って何? 書店で手にとってイラストを見て下さい)によって未知の状況をつくり出す実験の結果について、著者は**観察者である私に「おかしいな」と思わせる、「意味不明な」出現の仕方をする変則転向、それはまさしく、心によって発現させられた「予想外の行動」なのではないだろうか、ということでした。すなわち、この変則転向は、ダンゴムシの心が未知の状況を察知し、自発的に発現させたのではないだろうか、と思ったのです。地味な結果ではあるけれど、きっとダンゴムシの心の現れの一端をつかんだに違いない、そう思いました。(88頁)**と記述している。やはり研究者にはこのような優れた洞察力が必要なんだな、と思う。

心ってなんだろう・・・、ヒトの心ってどこにどのようにあるのだろう・・・。

ヒト以外の動物にも心はあるのだろうか。このことを確かめるには一体どうすればいいのだろうか・・・。こんな難問に取り組んでいる著者には敬服する。

本書に示されたいくつかの実験によってダンゴムシにも学習能力(経験で得た情報をフィードバックする能力)があること、そして環境の変化に応じた対応というか、「突飛な行動」ができることはよく分かった。でもそれが「心」のはたらきによるものだと理解することにはどうも抵抗があるなぁ~。 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。