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■ 4月の読了本は9冊。
松本清張の代表作『砂の器』と私の好きな『ゼロの焦点』はともに人に知られたくない不幸な過去を知る人物との偶然の再会が招いた悲劇を描いている。『影の地帯』は信州の湖が事件の重要な場所になっている。ちなみに『ゼロの焦点』で主人公の女性が失踪してしまうことになる夫と新婚旅行に出かけたのも信州だった。
『ゼロの焦点』には次のような一節がある。**敗戦によって日本の女性が受けた被害が、十三年たった今日、少しもその傷痕が消えず、ふと、ある衝撃をうけて、ふたたび、その古い疵から、いまわしい血が新しく噴きだしたとはいえないだろうか。** 新潮文庫1990年136刷462頁
清張作品で再読したいのは『球形の荒野』かな。
『神々の消えた土地』 北 杜夫が大学2年生のときに前半を書いていたものを40年ぶりに完成させたという作品。久しぶりの再読。戦争が招いた悲劇的な結末に涙。
『北杜夫の文学世界』奥野健男 **北杜夫文学の本質は幼年期の神話的な記憶と、少年期の傷つきやすい、鋭敏な魂の上に形成されている。自己の中にある幼少年期を純粋培養し、それを現代に、大人の世界に投影させ、人々に忘れていた素朴な詩心―全人間的なかなしさとよろこびとを蘇らせる、そこに北杜夫文学の本質的な魅力があるのだ。**(91頁)
『幽霊』『木精』『楡家の人びと』 北 杜夫の代表作はこの流れにある。『神々の消えた土地』然り。
『ルポ 保育格差』小林美希 こんな保育園が本当にあるのか・・・、保育現場のレポートを読んで驚いた。小さな子ども達が家庭を離れて初めて過ごす社会がこんな実態だとすると実に悲しい。保育格差は思っている以上に大きいのかもしれない。
『デジタル化する新興国』伊藤亜聖 デジタル技術の進歩が著しい新興国、先進国を凌駕する技術の可能性とリスクは世界に何をもたらすのか。
『現代建築の冒険「形」で考える――日本1930~2000』越後島研一 ざっくり括れば現代建築の形の変遷記、かな。