透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「本所おけら長屋 十」(C5)

2020-09-15 | A 読書日記

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 朝カフェ読書で『本所おけら長屋 十』畠山健二(PHP文芸文庫2019年第1版第6刷)を読み始める。この本にも短編が5編収録されているが、タイトルは5編ともひらがな4文字。

「さかいめ」はおけら長屋の大屋・徳兵衛の遠縁にあたる弥太郎という二十歳の青年が訳あっておけら長屋で生活を始めたことから起る「騒動」の顛末。

**「私もこの長屋に越してきたころは戸惑った。確かにひどいと思うこともあった。だがな、いろいろな騒動が起きて、泣いたり、笑ったりしていると、長屋の人たちの、心の底でのつながりが見えてくる。(後略)」**(47頁)

これは弥太郎を諭す鉄斎のことば。このシリーズの魅力はこのことにあるように思う。今朝(15日)この物語を読んでいて、涙が出た。スタバの2階には私以外にお客さんがいなかったから、老眼鏡、否、リーディンググラスを外して涙を拭うことがことができた。