■ 繰り返しの美学 京都の昼と夜。
「繰り返しの美学」 構成要素を繰り返すという単純なルール。それによって秩序づけられた状態に美を見いだそう、という試み。
いままで対象を建築に限定してきた。従って、取り上げてきたのは建築の構成要素の繰り返し。しかも構成要素は色も形も大きさも全て同じというタイトな条件、そして直線的な繰り返し。
左の軒先はこの実例。構造的な機能はおそらくないであろう、化粧の垂木というか、力板。色も形も大きさも同じ要素の直線的な繰り返し。先週末に出かけた京都、三年坂(たぶん)で採取した。
対象を広げると、右のような帯の柄にも繰り返しの美学を見出すことができる。梅の花をモチーフにしたであろう同じ輪郭の繰り返し。だがその中のデザインはそれぞれ違っている。しかも直線的な繰り返しではなく、平面的に広がる繰り返し。
軒先の例と比べると、かなり緩(ゆる)やかな繰り返しだ。
繰り返しの美学の対象は実に広いし、繰り返す構成要素の「属性」も全て同じ場合から、その一部のみが同じという場合のように「繰り返し度」(とでもいったらいいのか)にも幅がある。
ヨーロッパの古い町を俯瞰すると赤茶色の瓦屋根が平面的に繰り返されていることが分かる。その光景を美しいと感じるのはそこに緩やかな秩序、繰り返しの美を観ているから。
秩序づけられた状態をなぜ美しいと感じるのか。それは脳が秩序を歓迎するから。説明になっていないが、「繰り返しの美学」は数学の公理のようなものだと理解するしかない、というのが私の結論。
今年は少し対象を広げて「繰り返しの美学」を取り上げたいと思っている。清水の舞台の木組みやこの帯を取り上げたのは、その実践。