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国会議員は99条に違反して「憲法改正」できるのか?(4)

2008年07月09日 | 国際・政治
昨日に引き続き、そもそも国会議員は憲法を「改正」できるのか、浦部法穂氏(名古屋大学教授・法学館憲法研究所主席客員研究員)の講演を紹介しながら考えていきたいと思います。(文責:サイト管理者)


また、浦部氏は“憲法の基本的な原理”の点からも、「憲法改正」なのか「新憲法制定」なのかの違いを指摘しています。
つまり、いまの憲法の基本的な原理を大きく変質させるような変更は、それがたとえ一部の変更であっても、それはやはり「憲法改正」ではなく、「新憲法制定」と見なければならないだろうと言います。基本原理を大きく変質させるような変更がなされれば、もはや「憲法の同一性」が失われますから、いまの憲法の存在を前提とした変更とは言えなくなるのです。基本的な原理を大きく変質させるということは、いまの憲法を否定するということに他ならず、それは国会議員などの憲法尊重擁護義務に違反するわけで、そのような発議を国会はできないということを認識しなければなりません。

浦部氏は、その“憲法の基本的な原理”について、次の2点を挙げました。
(1)一つは、「憲法をつくる権限は国民にある」という原理です。
この原理を動かしたら、それはもはや「改正」ではありません。この日本国憲法は、国民がつくった憲法だということを根本的な前提として、したがって憲法の規定の矢印の向きは、国民から権力担当者へということになっていますから、この原理の変更は、憲法の基本的な性格を大きく変えることにつながり、それはもはや「憲法改正」とはいえないようなことになってしまいます。すなわちこの原理は、「国民主権」原理の一番根底にある原理なのです。
(2)二つ目に、日本国憲法に即して見たときに、「人権保障および平和主義」という原理も「改正」できないものと言われます。この点でも自民党の「新憲法草案」は「改正」の範囲を完全に超えていると指摘されます。
平和主義について、自民党の「新憲法草案」では、前文から「全世界の国民が平和のうちに生きる権利を有する」という文言が完全に消え、第二章の標題も「戦争の放棄」ではなく「安全保障」に変わり、九条で「自衛軍の保持」が明記されています。九条一項の戦争放棄条項は、最終案では現行のまま維持されましたが、戦争を放棄しているのに「軍」を持つということは全く無意味だと指摘します。逆に言えば、「軍」を持つということは、場合によっては戦争をするこということの表明にほかなりません。現行憲法の平和主義は、世界中の全ての人が「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生きる」ことのできるような、そういう国際社会のあり方を追求する、という哲学を前提にしていますから、一切の戦争を放棄し一切の戦力を保持しないと規定しているわけで、自民党案がこの現行憲法の平和主義の原理を大きく変質させるものだということは明白だとしています。
また、人権保障についても、自民党案は、現行憲法の「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」と言い換えている点を指摘しています。
浦部氏は、人権は「公共の福祉」によって制限されるという言い方には大きな問題があると指摘しながらも、これを「公益及び公の秩序」と言い換え、それによって人権は制限されるのだということになると、人権制限は際限なく広がることになると指摘します。なぜなら、普通、法律というのは「公益」や「公の秩序」維持を目的にするものですから、「公益及び公の秩序」に反しない限り人権保障が認められるというのか、結局のところ、旧憲法と同じように、法律が認めた範囲内で権利を保障するというのと同じ事になってしまうというのです。ですから自民党案は、人権保障についても現憲法の基本的原理を大きく変質させるものになっていると、浦部氏は批判しました。

【参考】『いまこそ憲法を学び考えよう』浦部法穂氏(名古屋大学教授・法学館憲法研究所主席客員研究員)の講演紹介から(2006年10月、法学館憲法研究所刊、400円+税)


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