日米安保条約改定50周年を来年に控え、このほど日米の外交・軍事閣僚で構成される「安保協議委員会(2+2)」の枠組みの下で、米国が日本に提供する「核の傘」を含む「拡大抑止」について定期的な公式協議を始めることが決まりました。
そこで「拡大抑止」とは何か──(2007年のブッシュ政権時の2+2でのことですが)この「拡大抑止」について、国際問題研究者で「非核の政府を求める会」常任世話人の新原昭治氏が「非核の政府を求める会ニュース」2007年7・8月合併号(第221号)で「拡大抑止」について解説していましたので、ご紹介させていただきたいと思います。(サイト管理者)
<「拡大抑止」とは何か──米核戦略と一体化する日米同盟強化 >
新原 昭治(国際問題研究者、「非核の政府を求める会」常任世話人)
■「拡大抑止」を日本と結びつけた最初の公式文書
日本を戦争する国家に変えつつある日米同盟再編は、米核戦略との一体化を急速に深めつつ強行されています。このことをはっきりと示したのが、(2007年)5月1日の「2+2」(日米安保協議委員会)の共同発表文で、日米両政府の共同文書で「拡大抑止」(エクステンディッド・ディターレンス)を確認したことでした。
発表文は、「米国の拡大抑止は、日本の防衛及び地域の安全保障を支える」「米国は、あらゆる種類の米国の軍事力(核及び非核の双方の打撃力及び防衛能力を含む)が、拡大抑止の中核を形成し、日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏付けることを再確認した」と述べています。
「核」の「打撃力」、つまり核攻撃力が、「拡大抑止」のカナメをなすと述べられています。日米公式文書が米国の核攻撃戦力を公然と日米同盟のためとして確認したのは、これまでの日米軍事同盟の歴史で初めてです。1978年と1997年の新旧の日米共同作戦に関するガイドラインには「米国は核抑止力を保持する」との表現はありますが、核攻撃力をカナメとした「拡大抑止」を日本と結びつけたのは、これが最初です。
■「『抑止』と呼ぶのはやめよう」の提言も
なぜいま、米国の核攻撃力が日米同盟のカナメと表明されたのでしょうか。 これは、圧倒的な核戦力と通常戦力で世界を抑え込もうとするブッシュ政権の先制攻撃戦略が、日米同盟の強化に深い影を落として、対米従属下の日本の急速な軍事化を促す基盤とされていることを示しています。
「拡大抑止」とは、米ソ核対決時代に生まれた米国の核戦略の概念です。当時、米国がソ連に対し核攻撃の脅しをかけることを「中核(コア)抑止」とか「消極抑止」と言いました。そしてこれを延長して、同盟国のためと称しつつ、ソ連に核攻撃の脅しをかけることを「拡大抑止」または「積極抑止」と称したのです。
この場合、そもそも「抑止」(ディターレンス)という概念が、あたかも「防衛」を意味するかのように誤解させるあいまいさを伴っており、それに加えて日本語の不適切な訳語がこれに輪をかけている事実に注目する必要があります。最近、全米核政策法律家委員会など米国の反核団体がまとめた報告『核の無秩序か、協力にもとづく安全保障か』でも、同法律家委員会のピーター・ワイス会長は、「核兵器を使うことをくわだてる政策をさして『抑止』と呼ぶのはやめよう」と提言しています。
(つづく)
【出典】「非核の政府を求める会ニュース」2007年7・8月合併号(第221号)より
http://www1.odn.ne.jp/hikaku/
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